日時2019年 11月 9日(土)14:00〜16:30
会場 :和光学園(調理室)
内容 団子に舌鼓を打った後で難解な評価関連の資料を読み解く
前回、10月の定例研究会が台風19号の接近により急遽中止となったため、2ヵ月ぶりの研究会となった。今回は、団子づくりの実習と評価関連の資料の検討の2本立てである。団子づくりの実習は会場校の野本惠美子氏の指導で行い、評価関連の資料の解説は金子政彦が行った。
1) 1 一コマの授業でも実施可能な団子づくりの実習 野本惠美子
近年の食生活の変化に伴って、米の消費量が減っている。米は、炊飯してご飯として食べるだけでなく、煎餅や団子などの原料としても利用されている。団子づくりをしてみてよくわかるのだが、日頃よく食べている団子が米を粉砕した米の粉を原料として作られていることすら知らない生徒もいる。ましてや、白玉粉と上新粉のちがいを知っている生徒はごくわずかである。
授業では、よもぎを入れた団子を作るのだが、この日は上新粉を使い、よもぎは入れずに作ることにした。ただ、上新粉だけでは固くて歯ざわりの悪い団子ができあがってしまうので、白玉粉を混ぜて作った。作業をやりながら、野本
氏がいろいろと解説を加えていった。参加者は、その説明に頷きつつ、疑問点について質問していた。「上新粉はうるち米を粉にしたもので、熱湯でこねて団子状にする。一方、白玉粉はもち米を粉にしたもので、ぬるま湯でこねて団子状にする。……」と、こんな具合である。
団子の作り方・作業手順は次のようである。作業開始から30分ほどで団子ができあがった。
@ 上新粉と白玉粉をそれぞれ別のボウルに入れ、熱湯あるいはぬるま湯でこねて耳たぶくらいの固さになるように生地を作る。(写真1および写真2)
A 別々の生地を一つにまとめて、さらによくこね、2〜3等分にして、棒状に生地をのばす。そして、同じくらいの大きさにちぎって丸める(写真3および写真4)。
B 鍋にたっぷりの湯を沸かし、沸騰したら団子を入れてゆでる(ゆで上がると団子が浮き上がってくるので、それを目安にするとよい)。ゆで上がった団子を水を張ったボウルに移して冷やす。冷めた団子を大皿に移してできあがりである(写真5および写真6)。
できあがった団子は竹串に刺し(写真7)、別に用意した粒餡や醤油だれをつけて試食した。ちょうどおやつの時間帯に完成したので、しばしティータイムとなった。
2)学習評価に関する資料を読み解く 金子政彦
今回の学習指導要領の改訂にかかわって、文部科学省・中央教育審議会(中教審)・国立教育政策研究所から答申・報告・通達などが相次いで出されている。どのようなものがあるか、学習評価に関するものを中心に、順を追って見てみると、次のようになる。
中教審答申(2016年12月21日答申)を受け、新学習指導要領が告示(2017年3月31日)された。新学習指導要領に対応した学習評価について検討していた中教審の教育課程部会が「児童生徒の学習評価の在り方について」と題する報告をまとめ(2019年1月21日)、「小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校における児童生徒の学習評価及び指導要録の改善等について」と題する初等中等教育局長通知が出された(2019年3月29日)。さらに、これらの報告や通知等を受け、「学習評価の在り方ハンドブック」が国立教育政策研究所教育課程センターより出された(2019年6月14日)。
ところで、どのような変遷を経て現在のような学習評価のしかたになり、今回、どのように変わろうとしているのかを簡単にまとめてみると、次のようになる。
a.1977年告示の学習指導要領改訂時より観点別学習状況の評価が導入された。
b.評定については、それまでの「集団に準拠した評価」(いわゆる相対評価)から、1998年告示の学習指導要領改訂時に「目標に準拠した評価」(いわゆる絶対評価)となり、さらに2008年告示の学習指導要領改訂時より「目標に準拠した評価」となった。
c.1989年告示の学習指導要領改訂時より観点別学習状況の評価の観点および順序が「知識・理解」「技能」「思考・判断」「関心・態度」から「関心・意欲・態度」「思考・判断」「技能・表現(または技能)」「知識・理解」になり、今回の改訂で「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」になった。
この日は5種類の資料が提示され、それぞれの資料でポイントとなる箇所を中心に説明がなされた。説明を受けた参加者の率直な感想が「資料に記述されていることは確かにもっともなことである。書かれているとおりに子どもを評価することができれば、教師はだれも苦労することはない。建前と本音が乖離している」であった。
当日は、以下に示すような点を確認するとともに、次回は技術・家庭科の評価のしかたを中心に検討することを再確認して研究会を閉じた。「今年の3月29日に出された通達の学習評価の改善点の項目の中に『設置者において、これに基づく適切な観点を設定すること』という記述がある。さらに、学習評価の円滑な実施に向けた取組の項目の中にも『今後、国においても学習評価の参考となる資料を作成することとしているが、都道府県教育委員会等においても、学習評価に関する研究を進め、学習評価に関する参考となる資料を示すとともに、具体的な事例の収集・提示を行うことが重要である』という記述が見られる。この“国においても学習評価の参考となる資料を作成する”の具体的な取り組みが今年の6月14日に出された“学習評価の在り方ハンドブック”だと思う。一方、今年の1月29日に出された“児童生徒の学習評価の在り方について”では、『評価規準の作成に関わっては、現行の“評価規準の作成、評価方法等の工夫改善のための参考資料”のように評価規準の設定例を詳細に示すのではなく、各教科等の特質に応じて、学習指導要領の規定から評価規準を作成する際の手順を示すことを基本とする』という表記が見られる。さらに、現行の学習指導要領改訂時に出された学習評価に関する通達には『今後、国においても、評価規準等の評価の参考となる資料を作成することとしているが、都道府県等においても、学習評価に関する研究を進め、学習評価に関する参考となる資料を示すとともに、具体的な事例の収集・提示を行うことが重要である』とし、今回の通達とはいくぶん違いが見られる。これらの点を勘案すると、観点別学習状況の評価の具体的な評価規準は学校現場を中心に作成するよう促しているのではないか」。
研究会に対する問い合わせ先
野本 勇