日時2019年 5月 11日(土)14:00〜16:30
会場 :和光学園


内容 素材から学ぶ調理実習―小麦の製粉から始まるパンづくり


 十連休となった方も多かった今年(2019年)のゴールデンウィークであるが、その直後の土曜日の午後に研究会を実施した。この日の会場は、今夏の大会(第68次技術教育・家庭科教育全国研究大会)でも使われることが決まったばかりである。
 さて、この日は、“素材から学ぶ調理実習”をテーマに、小麦粉(全粒粉)を使い、参加者自らがこねてパンを作る実習をやってみた。使用した小麦粉は、会場校の圃場でとれた小麦を石臼を使って製粉したもので、今夏の大会でもパンづくりを実施する予定である。実習の指導は会場校講師の野本惠美子氏にお願いした。研究会終了後には、麦の穂が風にたなびく圃場(写真1)の様子を会場校の亀山俊平氏に案内していただいた。
 なお、学習評価に関する文部科学省からの通達が先頃出されたということで、用意された資料をもとに、通達の中味についての情報交換もやってみた。
 小麦の栽培は、秋の種まきから始まり、翌年の春に収穫を迎えるというように、学年をまたがった学習となる。ただ、小麦は収穫後の保存が利くため、調理実習での利用に際しては融通性がある。  パンづくりのやり方には各種あるが、研究会当日は“ビニル袋を使って作る”という、会場校の調理実習でも行っている方法でやってみた。このやり方では、焼くまでの準備は自分の分を自らや ることになるうえ、後片付けも簡単という利点がある。パンづくりに必要な材料は小麦粉・砂糖・塩・バター・ぬるま湯・ドライイーストである。作り方の手順を簡単に記しておく。
@ 分量の小麦粉・砂糖・塩・ドライイーストをビニル袋に入れ、上下左右によく振る。
A ぬるま湯をビニル袋に一気に入れ、袋の外からもむように、手早く粉と水分をなじませる。このとき、袋の口は縛らず、袋の口をしっかり握って行う(写真2)。
B さらに、なめらかになるまで、調理台の上でこねる。
C バターを加え、さらによくこねる。外から袋を引っ張ってみて、生地が袋から離れるくらいまでやる。
D 袋の口を縛り、日なたなどの暖かい場所に20〜30分放置し、生地をねかす(写真3)。
E 生地を二つか三つに分けてまとめたうえで、袋に入れ直して口を縛った後、再度、暖かな場所に置いて醗酵させる(二次醗酵)。
F クッキングシートを敷いた天板の上に生地を並べ、 210℃の温度で14分間焼く(写真4)。オーブンは余熱しておく(余熱温度は210℃)。
 焼きあがったパンを試食しながらのまとめの討議となった。「近年、食の洋風化が一段と進み、ついに小麦の消費量が米の消費量を上回ったそうだね。一方、海外では、和食ブームとやらで、すしやおにぎりなどに人気が集まっているという話ではないか。米と小麦それぞれの調理上の特徴をしっかり理解させたい」、「自分で栽培・収穫したものを調理して食べるということは何ものにも代え難い。米は炊飯によって簡単に食することができるのに対して、小麦は粉にしたうえで、さらに手を加えないと食することができない。米と小麦のこうした違いを肌で感じさせたい」。このような発言が聞かれた。
 ところで、先頃、文部科学省から学習評価についての通達が出された。初等中等教育局長名で今年3月29日に出された「小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校等における児童生徒の学習評価及び指導要録の改善等について」と題する通知である。この通達に関する資料が用意されていたので、少し時間を割いて、その中味についての情報交換をしてみた。
 この通達では、学習評価についての基本的な考え方、学習評価や指導要録のおもな改善点、学習評価の円滑な実施に向けた取り組み、学習評価の改善を受けた高校や大学の入試の改善という5項目に分けて記述されている。また、新学習指導要領が全面実施される年度から(小学校は2020年4月から、中学校は2021年4月から)はこの通達に基づく学習評価に切り替わると記されている。この通達の内容に関して、参加者の注目を集めた部分を3箇所あげておく。
 一つ目は、「観点別学習状況の評価になじまず個人内評価の対象となるものについては,児童生徒が学習したことの意義や価値を実感できるよう,日々の教育活動等の中で児童生徒に伝えることが重要であること。特に『学びに向かう力,人間性等』のうち『感性や思いやり』など児童生徒一人一人のよい点や可能性,進歩の状況などを積極的に評価し児童生徒に伝えることが重要である」という部分である。これは、観点別学習状況の評価の観点の一つ「主体的に学習に取り組む態度」の具体的な取扱いを示しており、現行の観点別学習状況の評価の観点「関心・意欲・態度」にあたる。
 二つ目は、「今後,国においても学習評価の参考となる資料を作成することとしているが,都道府県教育委員会等においても,学習評価に関する研究を進め,学習評価に関する参考となる資料を示すとともに,具体的な事例の収集・提示を行うことが重要である」という部分である。学習評価については、現在、ほとんどの学校では、国立教育政策研究所が作成した「評価規準の作成、評価方法等の工夫改善のための参考資料」を利用しているのではないか。これが、今年1月21日に公表された「児童生徒の学習評価の在り方について(報告)」では、「評価規準の作成に関わっては、現行の参考資料のように評価規準の設定例を詳細に示すのではなく、各教科等の特質に応じて、学習指導要領の規定から評価規準を作成する際の手順を示すことを基本とする」のように変わることになる。
 三つ目は、「通知表の文章記述の評価について,指導要録と同様に,学期ごとにではなく年間を通じた学習状況をまとめて記載することとする」という部分である。





   


研究会に対する問い合わせ先

野本 勇