日時2019年 4月 20日(土)14:00〜16:30
会場 :中大付属中(工作室)
内容 箱づくりでは教師による製作前の試作が子どもの失敗を防ぐ
4月の定例研究会は、新年度最初の研究会ということもあってか、忙しい時期にもかかわらず、
比較的多くの参加者があった。今回は、木材を利用して箱の製作をさせる場合、どのような点に気 をつける必要があるか、実際に箱づくりを体験しながら検討してみた。材料や工具類の準備は会場校の禰覇陽子氏が、問題提起は野本勇氏がそれぞれ行った。禰覇氏は授業で小箱の製作を取り上げる予定とのことだった。
@ 設計から始める小箱の製作 野本勇
技術・家庭科の学習の導入としてものづくりの進め方を取り上げるが、手順を説明するだけで済ませてしまわず、比較的簡単な作品を実際に設計・製作させてみる必要があるだろうということで、小箱の製作を取り上げていた時期がある。この製作は導入学習という位置づけなので、材料として使う木材の性質などは扱わない。
授業は設計の手順がメインなので、具体的な課題を設定したうえでの学習となる。その課題としては、鉛筆1ダース(12本)が収納できる大きさの箱を作るというようなもので、生徒たちにとって は取り組みやすかった。その後、筆箱サイズの大きさの箱から、ペンチやはんだごてが収納できる大きさの工具箱に変えた。箸入れを製作させるということも考えられるが、筆箱よりさらに小さくなるため、加工がむずかしくなる。授業時数が以前より少なくなった現在、小箱の製作を導入教材として扱うのはむずかしく、本製作として取り組ませる必要がある。
野本氏の解説による筆箱づくりについて触れておく。「鉛筆を入れる箱なので、強度はそれほど必要ない。機能やデザインを考えたうえで設計図をかかせるが、基本的には同じ大きさのものを製 作することになる。あらかじめ溝を切った材料を用意し、自分の設計した大きさに切断させる。底板として使う合板は、必要な大きさに切断して使うのだが、溝の幅を計算に入れることを忘れる生徒が必ず出てくるので、注意がいる。箱の中が見えるように、できれば上板はアクリル板などを使
うとよい。特に強度も要求されないので、組み立ては木工用接着剤だけでよい。必要に応じて釘による接合を併用してもよい。まとめとして、『鉛筆はJIS規格に基づいて作られていることを考えると、だいたい同じ大きさ・デザインになってしまう。これにはどのようなメリットがあると思うか』とか、『箱の構造がいわゆる上げ底になっている。これにはどのような利点があると思うか』などを考えさせてみる」。
箱の材料の準備に関する野本氏の説明の中に、丸のこ盤の使用云々の話があった。これに関連して、技術・家庭科での工作機械の使用について、通達が出ていることが紹介された。文部省初等中等教育局長名で1968年2月12日に出された「中学校技術・家庭科における工作機械等の使用による事故の防止について」と題する通知である。その内容をしっかり理解したうえで生徒の指導にあたる必要があることを再確認した。
参加者は、箱づくりを進めながら、工具の上手な使い方のコツや失敗しないための作業上の留意点などを互いに伝授し合っていた。また、製作前の教材の試作は絶対に必要であることも参加者同士で再確認した。生徒が失敗をしやすい箇所が試作によってわかり、事前に対策を講じることが可能という利点もある。
箱づくり後の討議では、「箸づくりに取り組ませ、あわせて、できあがった箸を入れる箸入れを木材を使って作らせる計画を立てている」という禰覇氏の話から、箸入れづくりに関する内容に絞って進めることにした。その結果、指導上参考になる意見がいろいろ出された。その中からいくつ かを紹介する。「箱の内側にあたる部分の角を軽く面取りしておくとよい」、「前板の上部は、箱を傾けても蓋(上板)が動きにくいように、平面状ではなく、わずかに曲面にしておくとよい」、
「木工用接着剤で接合して作った箸入れは水に弱い。そこで、汚れたときに水洗いすることも考え、最後に塗装させておいたほうがよい」、「底板と側板は木工用接着剤で接合するとのことだが、ずれが生じないように接着させるにはかなりの技術を要し、むずかしい作業である。底板と側板が接 する部分に、底板の厚さ分だけ、側板に段差がついていると作業ミスも少なくなると思う。材料の納入業者に相談してみるとよい」。禰覇氏は「出された意見を参考に、さらに教材研究を進める」と述べていた。
研究会に対する問い合わせ先
野本 勇