日時2018年 9月22日(土)14:00〜16:30
会場 :東京学芸大附属世田谷中学校


内容  全国大会の成果をもとに今後の研究活動の方向を探る


 今夏の全国大会後はじめての定例研究会である。研究会の会場として使用する中学校で教育実習が始まっているとのことで、この日は、教員をめざす学生に対してどのような指導がなされているかを会場校の諏佐誠氏に報告してもらい、経験の浅い教員に対する経験豊富な教員からの助言のポイントを出し合う形で研究会を進めた。
 また、今夏の大会の基調提案でも取り上げられた、免許外教科担任制度の在り方に関する調査研究協力者会議のその後の動向についても、報告を受けたうえで、今後の研究活動とも絡めて意見交換をした。

@ 校技術科の教育実習の取り組み                  諏佐誠
 「教育実習をする段に及んで、検定教科書をはじめて開いたという学生もいたのには驚かされた」と前置きしたうえで、以下のような実習生指導上のポイントをあげられた。
 自信と誇りを持って生徒の指導に当たれるよう、生徒が学ぶ内容については、事前にしっかり頭の中に入れておく。とは言うものの、ほしいものが安価に入手でき、簡単に買い換えもできる世の中ゆえ、それなりの準備をして授業に臨むことが大事で、授業にも工夫が必要であることを認識しておく。授業の流れをつかむには学習指導案の作成と検討が欠かせないが、いくら指導案が完璧に近くできていても、授業がうまくいくとは限らず、むしろ失敗に終わることが多い。生徒にとっては1回限りの授業だからこそ、その授業のねらいを明確にして臨むよう心がけねばいけない。また、実習を伴う授業をする教科ゆえ、実習教室の整備や使用する工具類の点検を怠ってはいけない。さらに、授業終了後の片づけが生徒自らできるよう、し向けていく指導技術も必要になってくる。最終的には、授業で得た知識や技能をもとに、さまざまな問題解決が自主的に行えるようになることを目指しているので、その点を踏まえて実習にあたってほしい。
 その後の討議の中で、現代の世相を反映した、最近の学生気質のことがひとしきり話題になった。たとえば、「教育実習を始めてみて、自分が教員には向かないことを悟ったのか、実習を途中でやめてしまった実習生も過去にはいた」との話である。また、「要は実習に取り組む学生自身の姿勢や意識の問題ではないのか。指導者の持っているものをできる限り吸収したいという意欲が見られれば、指導者側から可能な限りの手がさしのべられるはず」と実例をあげて報告する参加者もあった。

A免許外教科担任制度の在り方に関する調査研究協力者会議のその後の動向    金子政彦
 「免許外教科担任制度の在り方に関する調査研究協力者会議」の動向については、今夏の全国大会(第67次技術教育・家庭科教育全国研究大会)の基調提案の中でも触れている。この間、免許外教科担任制度が用いられる背景、免許外教科担任の縮小に向けた対応、免許外教科担任によらざるを得ない場合の支援について、この会議で議論が進められてきている。一方、文部科学省においても、「……いわゆる教員の持ち時間数の調整のために免許外教科担任が行われることのないよう留意する……」(1994年9月29日付)をはじめとして、文書による通知も複数出している。
 昨年(2017年)6月29日閣議決定の規制改革実施計画においても、「免許外教科担任制度について、学期中の急な欠員のために許可するような場合等に限られるよう、各都道府県教育委員会に指導する等によって段階的に縮小すべく、免許外教科担任の許可について実態を調査し、これを踏まえて許可を行う場合の考え方や留意事項等について検討し、整理する等制度の在り方の見直しについて検討する」とされている。そして、本年(2018年)9月18日、6回にわたる会議のまとめとして報告書が公表された。それによると、「1953年の制度発足以降、長期的には免許外教科担任の許可件数は減少している。対応の方向性としては、近年の教員の需給の動向や今後の人口減少に伴う小規模校 増加の可能性等に鑑み、免許外教科担任制度は存続させる。ただし、同制度の利用を可能な限り縮小させるための取り組みを行う。どうしても免許外教科担任が必要な場合には、遠隔教育の利用など、担当教員への支援や研修を充実させる。これらの施策の実施とあわせ、文部科学省の対応策、教育委員会や大学に期待される役割についても言及している」となっている。
 意見交換の中での発言のおもなものをあげておく。「免許外教科担任者数が減少しているとのことだが、人口減や過疎化によって学校数そのものも減っているはずで、それも考慮に入れると、減少と言い切ってしまってよいのか」、「学校現場の代表として、全国中学校長会長が報告された、中学校の状況報告に関する資料があったが、その中に『免外解消に向けて考えられる工夫として、学校現場としては教員定数増が第一で、適正な教員配置と加配が求められている』が真っ先にあげられていた。そのように考えるのは当然だろう」、「免許外教科担任の根本的な解消にはほど遠い内容の報告書と言えるのではないか。結局のところ、小手先の対応になってしまっている感が否めない」。



 


研究会に対する問い合わせ先

野本 勇