日時2018年 6月9日(土)14:00〜16:30
会場 :東京学芸大附属世田谷中学校
内容 工夫・改良の余地のある教材で製作とプログラミングの融合学習を
6月の定例研究会は第二土曜日の午後に実施したが、この日は、関東地方などの梅雨入りが発表された直後とは思われないほど好天で、この日の都心部の最高気温も30℃を超えていた。
さて、PICマイコンを用いたタッチセンサライト(写真1)の試作とプログラミングを2月の定例研究会で実施した。そのとき、生徒が製作するうえで難しいと思われる点やプログラミングで改良すべき点などについて、試作後に議論がなされた。今回は、このセンサライトのプログラミング部分
に焦点を当て、改訂された学習指導要領のプログラムによる計測・制御の内容も視野に入れ、再度検討してみた。問題提起はこのセンサライトの考案者の後藤直氏(新潟県三条市立大崎学園)である。
@PICマイコンPIC12F1822でできること 後藤直
2月の定例研究会では、タッチセンサ機能搭載のPICマイコンPIC12F1822(写真2)のタッチセンサ機能を活かすためのサンプルプログラムをコンパイルしてPICマイコンに転送し、プログラムを実行した。その手順としては、専用のソフトでプログラムを作成し、コンパイルしたうえでICに読み込
みをさせるということになる。メインプログラムに至るまでに多くの設定が必要で、設定が一つでも間違っているとプログラムがうまく動作しない。LEDの点灯・消灯を繰り返すようにプログラムすれば、LEDを点滅させることができるし、これを応用して、点滅の時間を大きく変えることで、LEDの明るさの調整も可能である。
後藤氏は、今回のタッチセンサライトの製作について、次のようにまとめられた。「今回の教材開発では、実験を進めながらプログラムを改良・工夫するという点を中心に考えた。タッチセンサのしくみの理解は中学生には難しい。LEDを点滅させるプログラムを応用して、LEDの調光に利用で
きることがわかったので、プログラムの全体は理解できなくても、教材として十分に取り扱えるのではないかと感じた。ただ、製作後のセンサライトを家庭に持ち帰らせることを考えた場合、タッチセンサの金属部に触れるのをやめると、現状ではLEDが消灯してしまうが、これは実用的ではない。金属部に一度タッチしたら、ずっと点灯したままになるように改良する必要がある」。
その後の討議では、出された意見が次の2点に大別された。1つは、データを転送するため、プログラムの書き込みの都度、ICの着脱が必要という点である。着脱の際にICの足を破損させたことによるICの交換もあることを考え、ICは人数分より多めに準備することで対応するようにしたとのことだが、他にもよい方法があるのではないかという意見である。もう1つは、ユニバーサル基板を使用しているため、部品の実装面とハンダづけ面が表裏の関係にあり、回路がわかりにくいので、その点の解決策に関する意見である。
プログラミングあるいはデータ転送にかかわる意見のおもなものは、「ICの着脱の回数が少ないほど破損は少なくなるはず。そこで、LEDの点灯・点滅のしかたや明るさについて、代表的なもの何種類かのプログラムデータを入れた複数のICを準備しておき、それを使ってLEDの点灯のしかたを試させ、気に入ったプログラムを修正して、そのデータを転送して使わせるという方法だ。これなら、ICの着脱の回数は格段に減らせる」、「プログラミングの学習は別の形で行い、製作は最初に計画したものを作る。今はシングルボードコンピュータという便利なものがあるので、これを活用してみるという方法もあるのではないか。試しにラズベリーパイ(Raspberry Pi)という製品を入手したので、テストしてみようと思う」であった。
基板への電子部品の実装にかかわる意見のおもなものは、「基板の裏側で間違いなくハンダづけ
するのは、生徒にとって難度が高い。穴あき基板を使うのではなく、銅箔テープをプラ板に貼って、部品をハンダづけするという手法をとれば、回路が一目でわかるので、好都合ではないか」、「穴あき基板ではなく、カット基板(銅張積層板)を使い、表面の銅箔部分をプラ板カッターやミニルーターなどで削り取って、回路を作る方法もある。これも、銅箔テープを使う方法同様、表面実装となって、回路がわかりやすくなる」であった。
後藤氏は、「出されたさまざまな意見も参考にしながら、さらに改良を加えて授業実践に臨む」と、意欲を示されていた。このタッチセンサライトは今夏の大会(第67次技術教育・家庭科教育全国研究大会)でも取り上げられることになっていることを最後に付記しておく。
研究会に対する問い合わせ先
野本 勇