日時2018年 5月12日(土)14:00〜16:30
会場 和光学園
内容 エネルギー問題の正しい認識に必要な知識を身につけさせる工夫を
前回に引き続き、参加者は少なめであったが、交通機関を乗り継いで、数時間をかけて会場に駆けつけた、ある参加者が、研究会終了後も、会場内に置かれた教材教具の数々について、質問を浴びせかけたり写真に収めたりしていた、その姿が印象的であった。
さて、今回の研究会のテーマはエネルギー変換で、問題提起は会場校の亀山俊平氏である。亀山氏は、用意した数々の教材教具の説明を織り交ぜながら問題提起をしただけでなく、その後の討
議の中でも、次から次へと教材教具を取り出して、使い方その他の説明をしていた。
エネルギー変換の学習でおさえておきたいポイントは何か 亀山俊平
2011年3月の東日本大震災による原発事故を契機に、世界は自然エネルギー開発に軸足を移し、原発神話も崩れつつある状況下、日本の将来のエネルギー問題を正しく認識できるような知識を身につけさせることが重要である。こうした観点から、テーブルタップの製作を通じて発電・送電や電力について学ばせてきたこれまでの内容の見直しに着手した。直流と交流の違い、商用電源としIて交流が使われている理由、ACアダプタや変圧器(トランス)の役割、モータと発電機のはたらき、太陽電池とLEDのしくみとはたらき、充電池や家庭内蓄電装置の役割、電力需給の平準化やスマートグリッドの意味といった内容を考えて実践を始めている。むろん、原子力発電についても触れることにしている。現行の学習指導要領「技術・家庭」技術分野の目標に「技術を適切に評価し活用する能力云々」とあるように、日本の社会を支えているエネルギーについての正しい認識ができるよう、必要な基礎知識を授け、理解力を育てることが重要となってくる。機械要素や機構などのいわゆる機械学習の扱い方については検討中である。
亀山氏は、現行の教科書のエネルギー変換に関する技術の部分には結構使える資料があると、該当の部分を具体的に示しながら説明をされた。また、「改訂された学習指導要領の『エネルギー変換の技術』の項にある『これからの社会の発展とエネルギー変換の技術の在り方を考える活動などを通して……。ア 生活や社会、環境との関わりを踏まえて、技術の概念を理解すること。イ 技術を評価し、適切な選択と管理・運用の在り方や、新たな発想に基づく改良と応用について考えること』に切り込んでいけるべく、さらに詳細な授業計画を提示できるよう、検討を進めたい」とも述べられた。
亀山氏の要望もあり、今回提示された授業計画についての意見交換を中心に討議を進めた。出された意見の中から、そのおもだったものを紹介しておく。「指導内容を理解しやすくするために各種の実験を豊富に取り入れている点は大いに評価できる。ただ、同じ実験をやっても、20人を対象にした場合と40人を対象にした場合とでは、その理解に差が出るのだから、技術・家庭科の授業が20人(あるいは30人)でできるようにしたいものだ」、「原子力発電について、エネルギー変換の学習全体にあてられる時間とのかねあいで、どのくらいの時間が割けるかが決まるが、指導計画のどの時点で取り上げるかも重要であろう」、「現行の学習指導要領に『技術を適切に評価し活用する能力を育てる』とある。これを授業計画全体を流れる指導目標として授業細案を練っていけばよいのではないか。そのとき、教科書の資料も意外に使えることがわかった。新学習指導要領にも現行のものと似たような文言があるが、教科目標に変化があったわけだから、どのような教科書ができあがってくるのか、注視しないといけないのではないか」。
研究会に対する問い合わせ先
野本 勇