日時2018年 4月21日(土)14:00〜16:30
会場 東京学芸大附属世田谷中学校


内容  新学習指導要領の授業に円滑に移行できる指導計画の立案を


 4月の定例研究会は第三土曜日の午後に実施したが、新学期当初の校務処理などで多忙な教員が多いためか、参加者は少なめであった。しかし、予定した討議時間を2時間近くも超えるほど熱のこもった議論が続けられ、充実した研究会となった。  さて、この日は、新学習指導要領の技術・家庭科家庭分野で、日本の伝統的な生活に関する学習が今まで以上に強化されたことを受け、和装について取り上げ、着装だけでなく、和服(きもの)の ミニチュアの製作にも取り組んでもらうことを中心に、栽培学習の実践報告も扱った。さらに、前回からの継続として、新学習指導要領の移行期間中の授業についても検討してみるという盛りだくさんの内容の研究会となった。和装については野本惠美子氏(和光学園)が、栽培学習の実践報告は 会場校の諏佐誠氏が、それぞれ行った。

@ 装の成り立ちと構成を考える                 野本惠美子
 和服と洋服のちがいを簡単に言うと、曲線で裁たれたパーツの組み合わせの洋服(図1左と図2)に対して、直線で切り取ったパーツで平面構成により成り立っている和服(図1右と図3)と言うことになる。学習指導要領上では、現行も改訂後も、和服の基本的な着装を扱うことも可とはなっている が、和服の縫製指導までは求められてはいない。ただ、実際に縫製を体験することによって、和服の構成の理解が深まることは確かなので、和服のミニチュアづくりを進めながら、和装の成り立ち を考えていきたい。ということで、野本氏が自らモデルを務めながら着装(写真1)のしかたの解説をし、その後、参加者によるミニチュアづくりに移った。
 野本氏は、身長や体格のちがいによる調整のしかたなどの着装の説明とともに、右前・左前の意味などについて解説された。「きものや浴衣をほどいて反物に戻し、洗って糊づけをし、板に張って乾燥させるという洗い張りが比較的簡単にできるのは、直線的に縫い合わせてあるきものだからこそなのだ」とは、説明を聞いた後のある参加者のつぶやきである。
   和服の着装説明の後、参加者は和服のミニチュア(写真2)製作に取り組んだ。製作に使うのは布ではなく、ソーイングペーパーという名の縫える紙(色は白・赤・青の3種類、厚手の和紙)である。どの参加者もはじめて取り組むとあって、意外と時間がかかり、完成までに2時間以上を要した。「作業を何回かまちがえたが、和服の成り立ちをしっかり理解していないと、作業でミスを犯すということがよくわかった」、「ミニチュアづくりを通じて、和服がどのようにできているかがわかり、『きものや浴衣を実際に縫ってみよう』という気持ちになるのだろう」などの意見が作業後の参加者から聞かれた。

Aダイコン栽培を利用した生物育成の学習への取り組み         諏佐誠
 秋にダイコン栽培を行っている。種まきから収穫までの3ヵ月間を作業期間(その間の授業回数としては3回ほど)とし、生徒各自が事前に立てた目標に合わせて育成管理を行い、収穫時の検査まで自ら考えながら学習する内容にしている。収穫時検査の前に、一度だけ目標変更(修正)の機会を与えている。また、栽培品種は年内に収穫可能なものを選定している。秋まきのダイコンは春まきのものに比べて薹が立ちにくいので、生徒でも簡単に育てることができる。
 その後の意見交換で、「野菜の栽培では、種まき後の成長具合を見ながら間引きをするのがふつうだが、間引きについて考えさせるために、間引きをした場合と間引きをせずにそのまま育てた場合の収量を比較するなどということもやってみるとよい」、「施肥の効果を見るために、一度栽培したところに再度栽培させてみて、そうでない場合との比較をするなどということも考えられる」などの意見が出された。

B新学習指導要領の実施で授業に変化が起こるか(2)
        −移行期間中の授業をどのようにするか−    金子政彦
 本年(2018年)4月より新学習指導要領の移行期間に入ったが、中学校では、新学習指導要領の全面実施は2021年4月からとなっている関係もあり、授業に特段の変化はないようである。今回の学習指導要領の改訂で観点別評価のしかたも大きく変わるが、具体的な例示もない段階で、様子見と思われる。今回の改訂では、総則の位置づけが抜本的に見直され、新たに設定した6つの柱に沿って組み替えられた。理科の「科学的な見方・考え方を養う」という教科目標に代表されるように、現行の学習指導要領では、「見方・考え方」は学習によって身につけさせるものであった。ところ  が、新学習指導要領では、学習の過程で教科の特質に応じた「見方・考え方」を働かせながら、知識理解などにつなげていくとされた。この変化をどのように受けとめ、授業改善を図っていくのか、議論が必要と思う。
 この問題提起に対して、「今回の改訂では、『教科特有の見方・考え方を働かせ……』などと、見方・考え方を教科という狭い範囲で規定してしまっている。教科の見方・考え方を元に学習を始めるのではなく、子どもたちの生活の中や他の教科の学習で得られた情報も総動員して学習を進めるのがふつうではないのか。このままでは子どもが総合的に身につけようとする力が遮断されてしまう」、「今回の改訂では、学習内容だけではなく、学習方法まである程度規定されている。そうすると、『○○についてはこのようにやるのです』などと、やり方を示すだけで、実際には作業をしないで済ますなどということが起こりうる」などに代表される意見が出された。
 


研究会に対する問い合わせ先

野本 勇