日時2018年 2月11日(日)10:00〜16:00
会場 学芸大学附属世田谷中(技術室)


内容 PICマイコンを用いて、学ぶ楽しさも味わえるタッチセンサライトの教材としての有用性を検討


    2月の定例研究会は、いつも行っている土曜日の午後ではなく、第二日曜日に実施した。この日はたまたま建国記念の日であった。また、首都圏では私立高校の入試真っ直中という時期にもかかわらず、かなり多くの参加者があり、昼食をはさんで午前から午後へかけての4時間以上にわたって、教材製作や研究討議に熱心に取り組んでいた。なお、今回の会場使用はちょうど1年ぶりであった。
 さて、改訂された学習指導要領では、プログラミング教育を含む情報活用能力の育成の重視が打ち出されている。それに呼応するように、新学習指導要領の技術・家庭科技術分野「情報の技術」の内容も強化されている。
 そこで、この日は、タッチセンサライトの製作とプログラミングを通じて、中学校でこの教材を扱う場合の問題点や留意点を検討してみた。教材の準備と指導ならびに問題提起は後藤直氏(新潟県三条市立大崎中学校)に、製作に必要な機械や工具類の準備は会場校の諏佐誠氏に、それぞれお願いした。

@ PICを使ったタッチセンサライトの製作               後藤直
  現行の学習指導要領からプログラムによる計測・制御の学習内容が新たに加わった。この部分の学習に関しては、いろいろな教材会社から各種の教材が開発・販売されているが、高々10時間程度の授業時数に見合わないほど高額なのが難点である。今までいくつかの教材を公費で購入し、問題点を感じつつ、最小限の授業時数で使ってきた。その最大の問題は、学習後に生徒たちの記憶に残らないという点である。確かに授業は楽しく受けてはいるものの、学習後の印象が薄い。そこで、発想を変え、計測・制御の学習の必要事項がすべて学べ、あわせて学ぶ楽しさも味わえ、価格面の問題もクリアできる(材料費は 500円程度)製作教材を考案してみたので、実際に試作してみたうえで、改良すべき点などを検討してほしい。ちなみに、PICマイコン(Peripheral Interface Controller)を使った計測・制御は、センサとプログラムを変えることにより各種の制御を行うことができる。
 午前中は、写真1のようなタッチセンサつきのスタンドライトの試作にあてた。材料としては、IC,コンデンサ,抵抗器,ICソケット,LED,LEDソケット,ユニバーサル基板,アクリルパイプ,電池ボックス,単三電池,スペーサがそのおもなものである。製作手順の概略は以下のようである。
@ユニバーサル基板の加工(アクリルパイプ挿入用とタッチセンサ用の穴あけ)
Aユニバーサル基板への各種部品のハンダづけ他(電源関係、LED関係、タッチセンサ関係)
BLEDソケットのハンダづけとLEDの挿入(写真2)
Cユニバーサル基板と電池ボックスの固定
   
 午後は、プログラムを転送してICが使えるようにする作業から始めた。手順の概略は以下のようである。
@MPLAB X IDEというソフト(写真3)を使って、タッチセンサプログラムを書き込む。
APICkit3を使って(写真4)、プログラムをICに転送する。
BICソケットにICを挿入する(写真5)。

 作業がすべて終わった後、討議に移った。そこで出された意見のおもだったものを記しておく。  基板への実装あるいは教材の改良に関しては、「ユニバーサル基板だったためか、ハンダづけが大変だった。初心者にとっては、この基板を使ってのハンダづけはハードルが高い。したがって、ICピッチの基板を使った場合、実装技術の上手下手で作品のできばえが左右されることになる。それを回避する方法としては、銅箔テープを使うという手もあるが、耐久性の点で難がある。また、ハンダづけのしやすいICソケットもあるので、それを使うことを考えてもよいかもしれない」、「LED を2つ使うのだったら、発光色の異なるものを自由に選択させて学習意欲を誘うのもおもしろい。あるいは、思い切ってLEDを1つにしてしまい、プログラミングによって点灯のしかたを変えるようにするのもよい」、「今回はLEDにピンポン球を被せたが、ペットボトルを加工して被せてもおもしろいのではないか」があった。
   プログラミングに関しては、「プログラムをいろいろいじらせて、LEDを点滅させるようにしたり、点滅のタイミングを変えたりできることを体験させると、興味・関心がさらに増すと思う」、「いろいろなプログラムをICに読み込ませることでLEDの動作が変わるが、そのあたりのしくみについて多少なりとも理解させることも必要なのではないか」があった。
「情報の技術」の学習全体に関する意見としては、「現在、身の回りにある電気機器は、温度センサや水位センサなどによって 目的としている変化を電気信号に変換して、必要な制御を行っていることが多い。こうした日々の暮らしの中で使われている計測・制御の例をあげながら、プログラミングの目的が実感として捉えられるようにするとよい。そうすれば、タッチセンサライトの製作とうまく結びつき、学習効果も増すだろう」、「新学習指導要領では、調べ学習をやったり自ら課題を設定して学習を進めたりと、指導内容が現行の学習指導要領よりもかなり高度になっているように感じる。その点を踏まえると、これまでやってきたような実習や製作をほとんどしなくても済む指導計画も可能になるような気が する。家庭分野の内容がそのよい例だと思う。だからこそ、産教連がこれまで大切にしてきた、頭と手を使い、ものを作りながら必要なことを身につけさせるという実践を今後も続けることが重要となってくる。その意味から言うと、このタッチセンサライトはよい教材だと思う。さらに改良を 加えて広めたい」があった。
 後藤氏も、「今回出された多くの意見を参考に、さらに改良を加えていきたい」と、この教材開発に意欲を示していた。



 

 


研究会に対する問い合わせ先

野本 勇