日時2018年 1月13日(土)14:00〜16:30
会場 中大付属中(工作室)


内容 授業実践から教材・教具あるいはジグの適確性を見直す(3)


   1月の定例研究会のあった第二土曜日は、寒中の底冷えのする日であったが、暖房の効いた会場で熱のこもった討議が繰り広げられた。また、この日は、奇しくも大学入試センター試験が行われた日でもあった。
 さて、昨年(2017年)の9月以降、日々の授業を少しでもよいものにするための方策を具体的な実践から探るという目的のもと、教材をどう選択して授業を展開していくか、そのために教具あるいはジグをどう工夫するかという点を中心に、研究活動を進めてきている。その3回目の今回も会場校の禰覇陽子氏に実践報告をお願いし、それをもとに討議を進めた。当日は、テーブルタップの製作を題材に、家庭用の交流電源を扱った教材について、安全指導の観点から授業展開のしかたを検討してみた。
 また、新学習指導要領の内容をどのように読み取ればよいかという点についての問題提起をもとにした討議も行った。

@ 想定外の作業にも上手に対処しながら製作実習に取り組むための工夫 禰覇陽子
 テーブルタップの製作の前にはんだごての製作を行っているが、組立終了後の通電時に火花を飛ばした生徒がいた。ヒータ用のコードが断線したので、自己流の方法でつなぎ直してその後の作業を続けたため、線がショートしているのに気づかずに電流を流してしまい、火花が飛んだようである。テーブルタップはスケルトンタイプのものにし、パイロットランプとしてLEDを組み込んだものを製作させている。前年度はパイロットランプとしてネオンランプを使ったが、今回の製作ではテーブルタップ部分にネオンランプが組み込めないことが判明したため、LEDの利用に変えた。交流100Vを扱った製作では、ショートが問題となるので、ショート実験で生徒たちにその危険性をしっかり認識させるようにしている。これ以外の作業上の留意点をともに検討したい。
 その後の討議で出された意見としては、「PL法(製造物責任法)の制定の関係もあり、教科書から交流100Vを扱った教材が姿を消したが、生活の中でテーブルタップが現実に使われている以上、さ しこみプラグ部分の修理ぐらいできることも大事。ただ、ニッパやラジオペンチなどの工具のない家庭も多く、ましてや圧着端子と圧着工具など家庭にあるべくもない。そんなとき、ニッパや圧着端子などを使わずに修理できることを実際にやってみることも大切」、「完成後の使用を考えれば、テーブルタップやはんだごてなどの交流100Vを扱う教材では、コードがしっかりねじ止めされているかを教師側できちんと点検することが大切となってくる」などがあり、提案者への助言としては、「テーブルタップ部分に組み込む3つの部品(ダイオード、抵抗器、LED)のハンダづけは、部品が小さいのでやりにくいだろう。特に、LEDの足を曲げる必要があり、折り曲げ時に足を折ってしまう失敗が多い。それを防ぐジグがあるとよい。また、ハンダづけの際に部品が動いてしまうおそれがあるので、使用部品のの足の折り曲げや切断の位置、ハンダづけ位置などを記した原寸大の図を厚紙に印刷して全員に渡すなどして、そこに部品を載せてセロハンテープで固定させて作業させるようにすれば、ハンダづけの失敗はぐんと少なくなるはず」などがあった。

A学力のとらえ方の変更で授業はどう変わるか        金子政彦
 提案資料の他に、「育成すべき資質・能力を踏まえた教育目標・内容と評価の在り方に関する検討会の論点整理(主なポイント)」、「中教審答申別紙の各教科等の特質に応じた見方・考え方のイメージ」、「平成29年度小・中学校新教育課程説明会資料(抜粋)」の3種類の資料を提示して、問題提起。「育成すべき資質・能力を踏まえた教育目標・内容と評価の在り方に関する検討会」は、従来の学習指導要領を根本的に見直し、育成すべき資質・能力を明確化すること、学習内容を提示するだけでなく、指導方法まである程度盛り込むこと、学習評価を改善することを求めている。また、求められる資質・能力として、思考力を中核とし、それを支える基礎力と使い方を方向づける実践力の三層構造で考えるべきと提言している。これらの提言を踏まえ、次期学習指導要領についての諮問を中教審にしている。その結果、中教審答申では資質・能力や見方・考え方についての一定の解釈がまとめられている。また、評価も現行の4観点から3観点に整理するよう答申がなされた。そして、現行のものよりはるかに分量の多い記述となった新学習指導要領が誕生した。その根底を流れるのは学力のとらえ方の変化であろう。自分自身は、3年間の技術・家庭科の授業で「技術的なものの見方・考え方」を身につけさせるべく指導してきたが、この考え方を改める必要があるのか、検討してほしい。
 提案を受けてのおもだった意見を以下に記す。ただ、時間の関係で十分な討議はできず、改めて検討の機会を設ける必要がある。「中教審答申に『主体的・対話的で深い学び』だとか『アクティブ・ラーニング』だとかと言う文言があるが、全国どこの学校でも、免許を持った専任教員が技術・家庭科の授業をやるとでも思っているようにも受け取れる。そうではない現実があることを忘れてはならない」、「提示された資料中に『評価の観点のうち“主体的に学習に取り組む態度”については、学習前の診断的評価のみで判断したり、挙手の回数やノートの取り方などの形式的な活動で評価したりするものではない。……』とあるが、私たちは板書事項をきれいにノートにまとめてとってあるかだけで評価はしていない。教師の話を聞いて思ったり考えたり、あるいは疑問に感じたり理解しがたかったりした点などがノートに記述してあるかというようなことも加味しながら評価活動をしている。教師の仕事を見くびっているようにも思える」、「教師の創意と工夫で、今回の学習指導要領に盛り込まれた内容をこなすように求めるのならば、1クラスの人数を減らすのが効果的であることを理解してほしい」。  

 


研究会に対する問い合わせ先

野本 勇