日時2017年11月18日(土)14:00〜16:30
会場 中大付属中(工作室)
内容 授業実践から教材・教具あるいはジグの適確性を見直す(2
)
11月の定例研究会は第三土曜日の午後に実施したが、時雨模様の天候のなか、前回並みの参加者が会場に駆けつけ、熱のこもった討議が繰り広げられた。
さて、この秋以降、日常の授業を少しでもよいものにするための方策を具体的な実践から探るという目的のもと、教材をどう選択して授業を展開していくか、そのために教具あるいはジグをどう工夫するかという点を中心に、研究活動を進めてきている。そこで、これまでの成果を検証すべく、前回に引き続いて会場校の禰覇陽子氏に実践報告をお願いし、それをもとに討議を進めた。前回は木材加工について扱ったが、今回は電気学習について取り上げた。
また、新学習指導要領に盛り込まれた“資質・能力”あるいは“見方・考え方”について考える手がかりとなる資料の紹介があった。
@理科教育との関連も考慮しつつ実験結果から目に見えない電気をとらえる 禰覇陽子
電気学習を始める時点で理科の電気学習は未履修であったため、その点も考慮しつつ授業を展開することにした。乾電池・豆電球(ソケットなし)・導線(エナメル線)を渡して、豆電球を点灯させる実験(写真1)から電気学習が始まる。その後、乾電池・豆電球・導線をつないで作った回路(写真2)内の各所の電流の大きさを回路計を使って測定させる。豆電球が1個の場合と2個を直列につな
いだ場合のそれぞれについて、回路内の各所の電流の大きさを測定させ、測定結果から豆電球の明るさとの関係について考察させる。次いで、同様の回路について、回路内各所の電圧を回路計で測定させ、その結果についての考察もさせる。さらに、明るさの異なる豆電球を使って実験させたり、電圧の異なる乾電池を用意して実験させたりもやってみた。これらの実験結果から電圧と電流の比である抵抗値を導き出し、オームの法則へと結びつける。その後の授業としては、ハンダづけの実習も兼ね、電気はんだごての製作へと進む。さらに、プリント基板を使う製作を計画している。
禰覇氏は、「理科で未習の電流・電圧・抵抗の概念やオームの法則の意義を何とか理解させようと、実験をできるだけ取り入れながら授業を進めている」という点を強調されていたが、ここから議論が沸騰した。代表的な意見としては「技術・家庭科の授業時間が少なく、電気学習に割ける時間が限られているなかでは、電圧・電流の測定実験の時間を設定し、電流・電圧・抵抗の概念やオームの法則を理解させるなどということは理科での学習に任せ、技術・家庭科では製作に直結する学習に重点を置くのがよい。たとえば、導線の一つであるコードはなぜ絶縁されているのか、その理由を理科で学ぶ知識を活用して導き出せることのほうが大事で、そのうえでコードはどのような扱いをしなければならないかが正しく答えられることが必要」、「技術・家庭科での電気学習を理科での学習に先行して行う場合、電流・電圧・抵抗の概念やオームの法則にあえて触れずに学習を進めることは可能。たとえば、製作学習に必要となる回路あるいは回路図の理解さえできていれば、製作に支障を来すことはないはず。そのうえで、製作終了後の動作確認の時点で、理科での学習事項を活用して動作不良の原因が追求できればよいと考える」というのがあった。
その他の意見のおもなものを記しておく。「木材加工や金属加工での設計図にあたる回路図について、どの時点でどのような手順で実物の配置を表した実体配線図から図記号による回路図の指導へと切り替えていくか、よく考える必要がある」、「直列回路と並列回路のちがいの理解、極性と配線の色との関係も大事な学習事項」、「実装時、回路図を見て、そのとおりに配線ができることが回路図が読めるということだと考える。したがって、回路図が読めさえすれば、製作完了後の動作確認で不具合が見つかったとき、自分でその不具合箇所が見つけられることになる」、「回路内での各部品のはたらきを考える場合、理科では電圧を主体に考えていくが、回路の中で電気エネルギーは電力としてはたらいているゆえ、電力を主体に考えていくのがよい」。
A新学習指導要領で示された“資質・能力”を考える手がかり 金子政彦
新学習指導要領は本年(2017年)3月31日に告示されたが、その改訂についての諮問に先立ち、2012年12月、文部科学省内に「育成すべき資質・能力を踏まえた教育目標・内容と評価の在り方に関する検討会」という会議が設置され、13回にわたる議論の末、2014年3月31日に論点整理を公表した。その冒頭部分「検討に当たっての視点」と「育成すべき資質・能力について」を提示した。
時間の関係もあって討議はしなかったが、資料中の「『資質』とは、『能力や態度、性質などを総称するものであり、教育は、先天的な資質を更に向上させることと、一定の資質を後天的に身につけさせるという両方の観点をもつものである』とされており、『資質』は『能力』を含む広い概念として捉えられている」という部分に参加者の関心が集まった。
研究会に対する問い合わせ先
野本 勇