日時2017年9月16日(土)14:00〜17:00
会場 エデュカス東京


内容 今後の研究活動を念頭に新学習指導要領を検討する


 今夏の全国大会後はじめての定例研究会である。この日のテーマは本年(2017年)3月末に告示された新学習指導要領の検討である。このテーマについては、今夏の大会の基調提案にも盛り込まれて議論されたが、今回はさらに深く突っ込んで検討してみることとした。問題提起をされたのは亀山俊平氏(和光学園)で、生活やものづくりの学びネットワークが主催するシンポジウム(東京家政大学を会場に、9月24日実施)での4人のシンポジストの一人となっている。ちなみに、このシンポジウムのテーマは「学習指導要領と『家庭』、『技術・家庭』」である。
 研究会当日、亀山氏は、ご自身が報告された過去の大会の基調提案(2008年、水戸市で開催の第57次大会)をはじめとして、5種類ほどの資料を提示され、「今回の改訂学習指導要領を読み解くた めのキーワードは“資質・能力”と“見方・考え方”である。これらの文言についての共通認識を持ったうえで、教科内容の細かい部分の検討を進めたい」と、問題提起をされた。そこで、提示資料をもとに、学習会形式で意見交換を進めていった。この日の討議の概略を以下に示す。
 昨年(2016年)の大会(第65次大会)の基調提案でも触れているように、今回の学習指導要領の改訂は、小中一貫校の導入等の学制改革、高大接続改革と大学改革、教育委員会制度の改革等の教育改革の一環として、改訂作業が政府主導で進められたことが特徴の一つである。「新学習指導要領が規定する学力構造の全体像を端的に示したものが左図であるが、『資質・能力』にしても、『学力の三要素(知識・技能、思考力・判断力・表現力、主体性・多様性・協働性)』にしても、これを持ち出したのは何のためなのかというねらいが今ひとつ見えて来ない」と、児美川孝一郎氏(法政大学)は指摘(『教育』2016年10月号)している。
 ところで、「育成すべき資質・能力を踏まえた教育目標・内容と評価の在り方に関する検討会」という会議が文部科学省内に設置(2012年12月)され、13回にわたる議論の末、2014年3月に論点整理を公表している。それによると、「今後育成が求められる資質・能力の枠組みを考える際、自立した人格をもつ人間として、他者と協働しながら、新しい価値を創造する力を育成するため、『主体性・自律性に関わる力』『対人関係能力』『課題解決力』『学びに向かう力』『情報活用能力』『グローバル化に対応する力』『持続可能な社会づくりに関わる実践力』などを重視することが必要。資質・能力に基づく学力を三層構造で整理した。教科等を横断する汎用的なスキル(コンピテン シー)等に関わるもの、教科等の本質に関わるもの(教科等ならではの見方・考え方など)、教科等に固有の知識や個別スキルに関するものである」などとなっており、これらをもとに学習指導要領改訂についての諮問が2014年11月になされた。
 時間の関係もあり、教科内容の細部までは十分な検討ができなかったが、新学習指導要領についての理解が深まったことは事実である。「技術・家庭科の目標の冒頭部に『生活の営みに係る見方・考え方や技術の見方・考え方を働かせ』という文言が使われている背景はある程度理解できたが、見方・考え方は教師が意図的に授業をしくむ中で子どもに身につけさせるものだと考えているので、学習指導要領に示されている考え方とは相容れない」、「教科全体の目標と分野別の目標がそれぞれ育成を目指す資質・能力の三本柱に呼応している。それにあわせて評価のしかたにも変化が現れるはず」、「今回の学習指導要領の改訂では、本年2月公表の案から、パブリックコメントの結果を受けて3月末に告示されたものになる段階で、中学校の分については全部で77箇所の修正がなされている。技術・家庭科関係では、3箇所が変更されている。そのうちの2箇所が家庭分野で、『高齢者の介護』などというように、“介護”という文言が加えられている」、「児美川氏は、前述の論文で、『学習指導要領が定める教育内容をとおして、学習指導要領が推奨する教育方法によって、学習指導要領が目標に掲げる資質・能力を子どもたちが獲得できるよう……』と述べている。改めて学習指導要領の文言を眺めてみると、『○○を考える活動などを通して』とか『○○について調べる活動などを通して』などのように、本文の中に学習方法まで例示している。内容の取扱いの項に記述するのならばわからなくもないが、本文中に記載するとは。昨今、学習指導要領に対するしばりが以前より強くなってきている現状を考えると、ここまでやるのは教師の創意と工夫を否定し、やる気を失わせる何ものでもない。教師はだまってお上の言われるとおりに教育活動をやっていればよいとも受け取れる、今回の学習指導要領改訂である」などの意見が出された。  




 

 
 


研究会に対する問い合わせ先

野本 勇