日時2016年 11月 19日(土)14:00〜16:30
会場 東京学芸大附属世田谷中学校
栽培学習に対する意欲・関心を持続させるための工夫を
今回も前月に引き続いて第三土曜日の午後に研究会を行ったが、雨模様の天候にもかかわらず、福島県から駆けつけた先生ありという具合に、前回より多くの参加者があった。
研究会の冒頭、学習指導要領の改訂にかかわる中教審の審議状況について、次のような報告があった。「初等中等教育分科会教育課程部会内に設置されている教育課程企画特別部会が、校長会関
係・教育委員会関係・教職員団体関係などのあわせて50団体を4回に分けて、審議のまとめに対する意見聴取を行っている。その結果とパブリックコメントの結果をもとに、年内の答申へ向けて、審議のまとめについての修正の有無を検討している段階である。パブリックコメントには2974件の意見が寄せられ、その中には『技術と家庭それぞれで中学3年生は週0.5時間、1,2年生は週1時間という授業時間設定はあまりにも少なく、技術・家庭科の授業時数を増やすべき』という意見もあったとのこと」。
さて、この日は生物育成の授業で栽培作物をどのように選定するかという点を中心に、栽培学習全般について検討してみた。実践報告と問題提起は会場校の諏佐誠氏である。
@ 我が校の栽培学習を振り返って― 大根栽培から 諏佐誠
「生物育成」の学習は3年時の2学期に設定しているが、実際には数回しか授業が実施できないので、栽培上の留意点の説明や種まき・施肥などの実習しかできない。そのため、追施や間引き、水やりなどの日常の世話は休憩時間や放課後の生徒の自主的な作業に任せるしかない。大根作りを考えていたが、教育実習の時期と重なったため、栽培品種の選定などは実習生にある程度任せてみた
ところ、“三太郎”という短形の品種(タキイ種苗)を選んできた。授業を進めるにあたって、単に育てるだけでなく、どのような大根を育てたいのかを生徒自身に考えさせ、その目標に沿って水やりや施肥その他の世話のしかたを工夫させてみた。9月はじめの種まきから2ヵ月経った現在、収穫を迎え、家庭へ持ち帰った大根を調理し、大根栽培への思いをレポートにしたためさせている。なお、袋栽培と鉢栽培のどちらかの栽培方法を選んで大根作りをさせてみたことをつけ加えておく。
その後の討議ではいろいろな角度からの意見が出された。「大根栽培では連作障害はほとんど起きないし、アレルギーにも無関係なので、そういう意味からも取り上げる作物として適しているのではないか」、「大根栽培では、青首や聖護院などの何種類かの品種を組み合わせて栽培させ、その違いを観察させてみるのもおもしろいと思う」、「市販の大根は葉をとって売られている場合が多いが、大根を栽培させたからには、葉まで持ち帰らせて食させたい」、「収穫した大根を家庭へ持ち帰らせ、料理して食させている。そして、栽培から食するところまでを含めてレポートにして提出させているのは大変良い実践である。そのレポートに保護者のコメントが入っていれば、申し分ないものとなる。これで教科で今どんなことを学習しているのかがわかるし、教科の重要性も保護者に伝わる絶好の機会になるはず」というような、授業実践に対する意見が多く出された。
また、「授業で自分の育てている作物に虫がついていたりした場合は、手で一つ一つ取ればすむが、一人で多数の苗を管理しているようなときには、農薬を使って駆除せざるを得ない。そこから農業としての栽培を考えさせることもできる」、「以前の品種改良は交配による方法だったため、新しい品種が生み出されるまでかなりの期間が必要だったが、現在は遺伝子操作による方法が主流になっているので、品種改良にかかる期間がだいぶ短縮されている。こうした内容もどこかで取り上げたい」というような、農業に話を広げた意見もいくつか出された。
さらに、「今夏、都内の小学校で、茹でたジャガイモを食べた児童や教員が食中毒を起こしたというできごとがあったが、これは調理したジャガイモは校内で栽培したもので、ジャガイモの皮や芽に多く含まれるソラニン類が原因とわかったそうである。ソラニンは加熱しても無毒化しないので、ジャガイモの栽培をさせる場合には注意が必要である」、「こんな話がある。ある人が園芸店へ行き、店員に『大豆はないですか』とたずねたところ、『枝豆ならばありますが』と言われたという。正しい知識をしっかり教えたい」などの話も出された。
野本勇 isa05nomoto@snow.plala.or.jp