日時2016年 10月 15日(土)14:00〜16:30
会場 中大付属中(工作室)

 
 何をどこまで教えるのかをしっかり押さえたうえで授業展開を


  10月の定例研究会は第三土曜日の午後に行われたのだが、この時期は全国各地の小中学校で運動会や文化祭が行われることが多く、先生方も大変忙しいと思われる。そのためでもないだろうが、参加者は少なめであった。今回の会場使用は本年(2016年)6月に続いて2回目である。
 研究会の冒頭、学習指導要領の改訂にかかわる中教審のその後の動きについて、次のような報告があった。「定例研開催日現在、審議のまとめに対するパブリックコメントはすでに締め切られ、初等中等教育分科会教育課程部会内に設置されている教育課程企画特別部会が関係団体のヒアリングを進めている段階である。これは、校長会関係・教育委員会関係・教職員団体関係などのあわせ て50団体を4回に分けてヒアリングを実施するもので、これが11月初旬まで続く。その後、年内の答申へ向けて議論をまとめることになっている。これまでのヒアリングでは、小学校への英語教育の導入に対する問題点の指摘と要望、プログラミング教育の実施へ向けての要望がそれぞれ多く寄せられている。なお、本年5月に第九次提言を出して以降、審議が途絶えていた教育再生実行会議を再開し、学校、家庭、地域の役割分担をテーマに議論を始めるとのことで、今後の動きを注視していく必要がある」。
 さて、この日の研究会のテーマは回路あるいは回路図の学習をどう進めるかである。以下のような問題提起あるいは実践報告を受け、研究会が進められたが、目に見えない電気を対象にした学習ゆえ、何をどこまで教えるのかを指導する教師側で明確に把握したうえで学習を進める必要があると感じた次第である。

@ 回路の学習はどうしていますか                 金子政彦
 回路についての学習を始めるにあたり、何をどこまで教えるのかをしっかりつかんでおく必要がある。そのうえで、全体の指導時間を考慮しながら、条件に合致する教材を選定することになる。 具体的な指導内容を決めるにあたって、学習指導要領ではどのようになっているかを把握しておくことも大切である。現行の学習指導要領では、エネルギー変換に関する技術の (2)に「エネルギー変換に関する技術を利用した製作品の設計・製作について、次の事項を指導する。イ 製作品の組立て・調整や電気回路の配線・点検ができること」とある。これをもとに細かな指導内容を決めるのだが、回路学習の目標の一つを『回路図が読めてかける』ことと定めたとする。では、『回路図が読める』あるいは『回路図がかける』とは、具体的に何がどこまでできることをさすのか、また、そこまでできたことをどのようにして確かめるのか。このことと関連して、『この2つは違う回路だ』といった場合、回路が同じか違うかをどのようにして見分けさせるか。こうした点をこの後の討議で明らかにしたい。

A 私の回路学習と使用教材      諏佐誠(東京学芸大学附属世田谷中学校)
 電気学習では、キット教材を中心に使用する教材を選定し、その製作の中で電気に関する必要な学習事項を指導している。今までに取り上げた教材あるいは現在も扱っている教材をいくつかあげてみる。現行の学習指導要領になった頃から交流電源に絡む教材が教科書から姿を消したが、子どもたちの身の回りには交流電源の電気機器が多くあるゆえ、取り上げる必要があると考えている。また、ハンダづけは電気学習で子どもたちに身につけさせたい技能の一つと思っている。そこで、はんだごては久富電機産業(株)の電気はんだこてキットを、テーブルタップは太洋電機産業(株)のテーブルタップ組立キットをそれぞれ扱っている。また、懐中電灯の豆電球(クリプトン球)をLEDに変えたLEDライトを製作させたこともある。なお、山崎教育システム(株)の電気実習体験ユニットは技能面の学習事項の点検に向いていると考え、活用させてもらっている。
 諏佐氏の製作したテーブルタップにはパイロットランプとしてLEDが組み込まれているが、現在はさまざまなの発光色のものが市販されているので、好みの色のものを選ばせてもおもしろいのではないかとのことだった。このLEDライトの製作の詳細については『技術教室』(現在は休刊)2010年9月号をご覧いただきたい。では、討議の様子を紹介しておく。
 まず、はんだごてやテーブルタップの製作にかかわる、ハンダづけやコードの端末処理などの作業についてである。はんだごてやテーブルタップの製作では、実習中や完成品を使用中に事故が起きないよう、指導者は細心の注意を払う。「はんだごては、実習に先立ち、ねじのゆるみがないかなど、こて先の状態を中心に入念に点検する。また、テーブルタップは、完成後に分解して、ねじ止めの状態などを点検する。使用に問題なしと判定したものには使用OKのシールを貼ったうえで返却し、家庭へ持ち帰らせることにしている」と諏佐氏は述べていたが、こうした安全面に対する教師側の配慮は欠かせない。また、最近、法令の変更によってコードの規格が変わり、作業がやりにくくなったとの発言が多くあったが、テーブルタップを組立・製作する場合、コードの端末処理とねじ止めは必須の作業である。コードの接続には圧着端子の使用が欠かせないが、その作業には圧着ペンチが必需品となる。「コードの端末処理とねじ止めにはワイヤストリッパや圧着ペンチがあると便利なのは確かだが、このような専用工具は一般の家庭にはないのがふつうである。そのようなとき、どの家庭にもあると思われるカッターナイフやはさみ、ねじ回しを使っても作業ができることを体験させておくことも大事」との意見があったが、こうした点も大切にしたい。
 次に、回路学習あるいは電気学習にかかわる点についてである。「電気学習では理科の学習との関連も考慮しないといけないが、技術・家庭科では実際の場面で使えるようにするという点で、理科とはちがう。たとえば、オームの法則を扱うにしても、単に法則の意味がわかるだけではだめで、回路に入れた抵抗器の抵抗値や定格が適正か否かを法則に基づいて判断できることが大切」、「回路を理解させるには、段階を踏まなければむずかしいのではないか。回路には電源と負荷があり、回路に直列にスイッチを入れて、回路を流れる電流を制御する。このとき、実際の回路とそれを図で表した回路図の両方がうまく結びつかなければならない。あわせて、電気がどこをどのように流れているのかを理解させる必要がある」、「正直言って、電気が流れるとはどういうことなのかということ自体よくわかっていない。高圧送電により一般家庭へ電気が送られてきているが、その理由が途中で電圧が下がってしまうことに由来しているとのこと。そこがいまいちよくわからない」など、いろいろな角度から意見が出された。   
 

  

  


 

 
野本勇 isa05nomoto@snow.plala.or.jp