日時2016年 6月 11日(土)14:00〜16:30
会場 中大付属中(工作室)

 
 授業で使う機械や工具類の上手な管理法について伝授する



  梅雨入りが発表されてから1週間ほど過ぎた第二土曜日の午後に研究会が行われたのだが、参加者は前回より少なかった。今回の会場を使うのははじめてで、中学校は開設されて間もない(平成22年度新設)ためか、研究会場となったクラフトルーム(この学校では技術室をこのように呼ぶ)の設備は十分に整っていない。そのような環境下で、授業を担当する禰覇陽子氏は日々努力を重ねているとのことである。
 この日の研究会は木材加工の指導方法と加工に使用する工具類の上手な管理のしかたがテーマである。また、今回も、中教審の審議状況について情報交換した。
 学習指導要領の改訂にかかわる中教審の審議は、教科等別・学校種別の審議が大詰めを迎えているようで、これまでの議論を整理したものができつつあり、審議のまとめが完成するのも間近いのではないかと思われる。ここでは、「家庭、技術・家庭ワーキンググループ」の議論のまとめのごく一部を紹介しておく。技術・家庭科の評価の観点は「生活や技術についての知識・技能、生活を工夫し創造する能力、主体的に実践する態度」、同様に、小学校家庭科の評価の観点は「家庭生活についての知識・技能、生活を工夫し創造する能力、主体的に実践する態度」と、現時点でそれぞれなっている。
 さて、当日は、野本勇氏の実践報告と問題提起をもとに、経験豊富な教員が若い教員の質問に答える形で研究会が進められた。
  
@ 指導上のポイントを押さえたテープカッターの製作      野本勇
 材料としての木材の特徴および魅力から木材加工の授業をスタートし、木材の性質へと学習を展開する。関連して、合板や集成材などの木質材料についても軽く触れる。木材についてのこうした基本的な性質や木工用の工具類の取り扱いに関する学習をひととおり済ませた後、テープカッターの製作に入る。取り上げる木工具・機械類としては、さしがね・両刃のこぎり・四つ目ぎり・三つ目ぎり・げんのう・かんな・卓上ボール盤などがそのおもなものである。木工具の使用法や使用上の留意点については、師範してみせるだけでは細部まで十分に伝わらない恐れもあるので、工具類を使っているところの映像も用意し、生徒への周知徹底を図っている。
 その後の討議の様子を、参加者同士のやりとりを交えながら、いくつか紹介しておく。「テープカッターの製作では集成材を使うのだが、木質材料についての学習はどの時点で行うか」との問いには、「木材の性質の学習と関連づけて行うとよい。技術室の工作台や腰掛けには集成材が使われていることが多いので、これを利用して説明するのも一つの方法である」との答えが返ってきた。「木材同士の接合に際しては、木工用接着剤を使う例が多いが、それ以外に釘打ちもよく使われる。釘打ち用の工具として教科書では“げんのう”が取り上げられているが、金づちやハンマとどうちがう?」との問いかけに対して、参加者が入れ替わり立ち替わりして、黒板を使って説明をしていた。また、教科書にも記述のある、げんのうの頭部の形状の特徴について、現物を手にしながら説明する参加者の姿が見られた。さらに、げんのうの使い方のコツについて、「釘打ちでは、打ちつけた釘が曲がったり、打ち損ねて釘を支えている指にげんのうが当たったりする例が多いが、肘を脇腹に当てたままげんのうを振り下ろせばうまくいく」と、実演つきで説明する参加者もいた。
 工具は最良の状態で使わせたいので、使用前の点検と使用後の手入れが欠かせないのと併せて、使いやすくて品質の確かな工具を購入することが肝心であることも確認した。また、工具箱を上手に活用して、必要最小限の工具を入れて管理することが、点検・保管・手入れなどで教員の負担を減らすことにつながることも確認した。
  


 

     

 
野本勇 isa05nomoto@snow.plala.or.jp
永澤悟