日時2016年 5月 21日(土)14:00〜16:30
会場 和光学園(技術室)

 
 現代の子どもにあわせてエネルギー変換の授業展開も工夫を
       (ラジオをどう教えていますか)


  5月の定例研究会は第三土曜日の午後に実施したのだが、会場校の校舎の周りの緑が目に眩しく、吹き渡る風も心地よかった。このような気候に誘われたわけではないだろうが、参加者はいつもより多めであった。
 午前中は校内で今夏の全国大会(第65次技術教育・家庭科教育全国研究大会)の開催案内(大会チラシ)の発送作業を行っていたとのことで、その作業に引き続いての定例研参加という参加者もいた。
さて、今回の研究会のテーマはエネルギー変換で、電波を利用しているラジオ放送またはラジオ製作をエネルギー変換の授業で扱う場合の留意点を検討してみた。また、中教審の審議状況についても情報交換した。
@エネルギー変換の授業でラジオの製作をどう扱っているか        野本勇
 3年の3学期にラジオの製作を取り上げている。ラジオは不特定多数の人々に一度に情報を流す手段として有効で、現代の情報化社会がここから始まっていると言っても過言ではない。  授業は教師からの「ラジオって何?」と言う問いかけから始めるが、生徒からは明確な答えは返ってこない。ラジオ放送は電波を飛ばす側の放送局とその電波を受ける側の受信機で成り立っており、ラジオは放送局と受信機を併せたものを指すのだが、受信機そのものをラジオと呼んでいるのがふつうである。その後の授業展開は、電波(電磁波)とは何か、電波の種類、音声電流を電波に乗せる方法(変調方式)などと続き、電波をそのまま利用しているゲルマニウムラジオの製作へとつなげる。  プリントを利用した説明主体の授業が続くと生徒も飽きるので、説明の合間に演示実験を取り入れている。たとえば、電磁波はかなりのエネルギーを持っているので、電源につないでいない蛍光ランプを実験装置のコイルに近づけると、蛍光ランプが光ることを見せる実験(写真1)である。  その後の討議で出された意見のおもだったものを記す。「今の子どもは、ラジオ放送をラジオ受信機で聞くのではなく、スマホのアプリを利用して聞いている状況だから、ラジオあるいは電波について取り上げるならば、授業展開のしかたを工夫しないと、子どもは授業についてこないだろう」、「交流について理解していないと、どのようにして電磁波が発生し、それがどう伝わっていくかなどということは理解しがたいだろう」、「エネルギー変換の学習の中で、ラジオが聞こえるしくみあるいは電波について取り上げるならば、今回報告されたような流れで授業展開する場合は、学習指導要領に『技術が生活の向上や産業の継承と発展に果たしている役割について考える』とある点を念頭に、ラジオあるいは電波の利用に関する技術史として取り上げてみるのがよいのではないか」。  野本氏の師範した実験が参加者の注目を集め、このような装置で蛍光ランプが光るならばということで、持ち出してきた電子レンジの中に蛍光ランプを置いてチンしてみた(写真2)ところ、見事に蛍光ランプが光った。
  
A中教審での議論をもとに技術教育・家庭科教育について考える   
   金子政彦
  一昨年(2014年)11月に諮問のあった、学習指導要領改訂にかかわる中教審の審議は、現 在、教科等別・学校種別に専門的に検討がなされている段階で、技術教育・家庭科教育にかかわる審議は「家庭、技術・家庭ワーキンググループ」でなされている。公表されている資料によれば、学習指導要領改訂の方向性として学習内容の削減は行わない方針が示されている。公開されている資料を読み解くと、技術教育にかかわる部分ではプログラミング教育重視の姿勢が見られ、家庭科教育にかかわる部分では学習内容から“調理”の文言が消え、かわりに“食育の充実”なる文言が登場していることがわかる。今後は中教審の審議状況だけではなく、教育関係の施策に大きなかかわりのある教育再生実行会議の動向も注視していく必要がある。
 その後の意見交換での発言のおもだったものを記しておく。「技術・家庭科技術分野の現段階の学習内容が『A材料と加工の技術 B生物育成の技術 Cエネルギー変換の技術 D情報の技術』となっている。単に『情報の』だけでは何を学ぶのか、その内容があいまいである。現行のように『情報に関する』とするか、『情報処理の』と変えれば、はっきりする」、「小学校からプログラミング教育を導入し、こうした教育を重視しようという意図のようだが、要はアルゴリズムを学ばせるということだろう」、「提示された資料を見ると、今後の家庭科教育は少子高齢化への対応のしかたを最重要視した学習内容になるようだ。学習指導要領の改訂で被服学習が様変わりしてから久しいが、今度は食物学習が大きく変貌することになるのではないか」
 

     

 
野本勇 isa05nomoto@snow.plala.or.jp
永澤悟