日時2016年 2月 6日(土)14:00〜16:30
会場 八王子学園(工芸室)

< 小中高をつなげる情報教育をどう構築するか >


   前回に引き続いて、同じ会場で2月の研究会を実施したが、1ヵ月近く前に降った雪がまだ解けずに、ところどころ残っていた。今回は情報教育がテーマのためか、前回より参加者が多く、しかも、その半数以上を若い教員が占めていた。  さて、この日は、中学校における技術・家庭科の授業実践を会場校の永澤悟氏に、高校における情報科の授業実践を禰覇陽子氏(中央大学高等学校)に、それぞれ報告してもらうとともに、金子政彦が提示した情報教育にかかわる中教審の審議状況を簡単にまとめたものも参考にしながら、あるべき情報教育の姿について意見交換を行った。

@ 私が進める中学校の技術・家庭科における情報教育      永澤悟
  1年時にキーボード操作のしかたなどのコンピュータの基本的な使い方を、2年時に情報モラルを、3年時にプログラミングをそれぞれ扱っている。情報モラルについては、サイバー犯罪や著作権などの情報社会における問題を取り上げているが、現行の技術・家庭科の教科書があまり参考にならないため、高校の情報科の教科書を参考にした手作り資料を使っている。プログラミングに関しては、コマンドをキーボードから入力してプログラムを組むのは難易度が高いので、キーボードをほとんど使わずにプログラムを組むことができるScratchというソフトを使っている。このソフトは起動に少し時間がかかるのが難点ではあるが、扱いやすい。手始めにFizzBuzzという名称のゲームをやり、このソフトに慣れてもらうことにしている。また、フローチャートについても扱っている。
A 私が進める高校の情報科における情報教育           禰覇陽子
    高校の情報科では、情報の活用と表現、情報通信ネットワークとコミュニケーション,情報社会の課題と情報モラル,望ましい情報社会の構築(社会と情報)、コンピュータと情報通信ネットワーク,問題解決とコンピュータの活用,情報の管理と問題解決、情報技術の進展と情報モラル(情報の科学)がそれぞれ学習内容となっているが、情報のディジタル化とネットワーク技術の2つに重点を置いて授業を進めている。情報のディジタル化の学習では、画像処理のしくみを取り上げ、画像のディジタル化について、画像の解像度や階調の変更、画像の圧縮などといった内容を、実習を中心に扱っている。毎回の実習のまとめとして、レポートの作成を義務づけている。
  2人の実践報告を受けて、討議に移ったが、活発な意見交換がなされ、情報教育に関してだけにとどまらず、技術教育・家庭科教育のあり方にまで議論が進んだ。情報教育については、「コンピュータ内では二進数として情報の処理がなされているが、これは電源のON、OFFという2つの状態のちがいを数値で表現することからきている。二進数については高校の数学で学ぶのだから、中学校段階でディジタル化の原理に深入りする必要はないのではないか」、「コンピュータは二進数として情報の処理がなされて動作しているのだから、そのことは理解させるべき」、「現行の学習指導要領の技術・家庭科では、それまで学習内容に入っていたコンピュータの操作、文書処理・表計算処理などの基本的な情報の処理などが削られている。これらは小学校段階で指導されると解釈すべきだろう。そうなると、小学校教育の中のどの部分で担うべきものなのか。また、技術・家庭科の指導内容に情報モラルに関することが入っているが、中学校教育全体の中で取り組んでいくべきもので、教科の指導内容として適切とは言えないのではないか」、「子どもの現状をつぶさに見たとき、全員が高校進学するということを前提にしたような情報教育ではなく、義務教育終了後すぐに実社会に出ても役立つような情報教育のほうがよいのではないか」などの意見があげられる。
 「技術教育・家庭科教育でねらうのは、よい開発者を育てることなのか、それとも、よいユーザーを育てることなのか」という発言をきっかけに、討議の後半では、技術教育・家庭科教育全般に関する意見が相次いだ。「一般普通教育としての技術教育・家庭科教育でねらうのは、開発者の育成という視点から見るのではなく、賢いユーザーを育てるという立場から見るべき。有識者の会議などの様子では、一握りのエリートを育てることも可能にするような教育制度にしようと目論んでいる節も見受けられる」、「技術教育・家庭科教育で何をねらうべきかと言えば、立派なユーザーとして生活してゆけるようなものを身につけさせるべきで、たとえば、文書作成や表計算処理のソフトウェアを使いこなせるようにするのがよい」、「簡単な四則計算すらおぼつかない子どもがかなりいるという現状を見たとき、義務教育段階では基礎学力さえつけばよく、エキスパートを育てるのは高等学校以降の高等教育段階でやるべきだ」、「現在は社会の変化が激しい時代だが、普遍的なものも大事にし、それを日々の教育の中で育んでいくべきだ」などの意見があった。

     

 
永澤悟
野本勇 isa05nomoto@snow.plala.or.jp