日時2016年 1月 23日(土)13:00〜16:30
会場 八王子学園(工芸室)
< エネルギー変換 ・ 機械(機構)学習の今 >
1月の定例研究会は第四土曜日の午後に実施した。今回の会場を使うのは3ヵ月ぶりであるが、1週間ほど前に降った雪が消えずに校舎やグランドに残っていた。研究会の開始前、この4月から技術分野の授業をはじめて担当する予定の若い教員に対して、参加者がいろいろ助言したり相談に乗ったりしている光景が見られた。
さて、エネルギー変換の学習がこの日のメインテーマであるが、その学習内容の一つである機械学習に焦点をあてて検討してみた。また、研究会の最後に、学習指導要領の改訂にかかわる中教審の審議の動向についても情報交換した。
@エネルギー変換の学習で機械の機構にかかわる内容をどう指導したか 野本勇
1年時に、技術分野の学習の導入として、技術が発達する意味や人間が道具を使うようになるまでの歴史を説明した後、加工学習に入る。教師の説明ばかりでは生徒が授業に集中しないので、途中に学習課題を入れ、飽きがこないように授業の進め方を工夫する。2年時に取り上げるエネルギー変換の学習では、電気学習とともに機械の機構に関する学習も大切にする。授業にあてられる時間も限られているので、リンク装置を中心に機構についての学習を展開する。厚紙を使ってリンク装置を作り、各リンクの動きを確かめさせ、その応用として生徒各自に平面的模型を作らせる。個々までの学習にあてる授業時数は7時間ほどである。
「実際の機械の例として生徒たちの身近にある自転車を扱うが、自転車の構造を絵にかかせてみると、おかしなものをかく生徒が多く、自転車についてはよくわかっていない実態がある」との補足が野本氏よりあった。その後の討議のなかで、「身の回りにある機械について意外に知らない生徒が多いという実態を踏まえ、厚紙を使ってリンク装置づくりを取り上げる場合、平面的な模型の動きと実際の機械の動きを結びつけるのを忘れてはならない」、「回転運動の伝達について扱うのならば、トルクに関しても扱うべきだろう」などの意見が出された。
A機械学習で自転車を取り上げる意義は何か 藤木勝
身近な機械の一つである自転車について、授業で取り上げるのに先立ち、自転車に関する資料を自分なりにまとめ始めている。教材として自転車を取り上げるからには、変速装置つきの自転車で、坂道でギヤを切り替えて、ペダルを楽にこぐことができる理由をきちんと説明したいと思っている。
その後の討議のなかで、「ギヤ比・速度・駆動力の相互の関係を、計算式を使って数値を出して比較するだけでは、生徒に理解させるのは大変である。運動の伝達に関係する部分だけを取り出した自転車模型とバネばかりを準備し、ギヤの組み合わせがちがうと速度も回転力もちがうことを実験で確かめ、そのうえでギヤ比や回転数を計算で確認させる。こうした手順を踏んで、生徒が自転車利用の際に体感していることを納得させていくのがよいのではないか」、「自転車について、駆動力やトルクについて扱う場合、使用する用語の意味を、指導する教師側できちんと理解したうえで使い分ける必要がある。ここでは、『速度(大きさと方向を持つ)』と『速さ(大きさのみ持つ)』である」などの意見が出された。
B学習指導要領の改訂に関する中教審の審議状況 金子政彦
学習指導要領の改訂については、2014年11月の諮問以来、1年あまりが経過した。その間に中教審の審議はどこまで進んだか。昨年(2015年)の夏、それまでの審議内容をまとめた教育課程企画特別部会論点整理なるものが出され、それに沿ってさらに具体的な内容について審議が進められている状況である。技術教育・家庭科教育が関係する審議は家庭、技術・家庭ワーキンググループ,情報ワーキンググループ,産業教育ワーキンググループの3部会で進められている。今後もこれらの部会の審議の動向を注視していく必要がある。
「資料中の委員の発言内容を見ると、技術・家庭科の授業時間が少ないことなどの問題点を認識しているようだが、本当に理解してくれているのならば、その対応にしっかり取り組んでもらいたい」、「各委員の発言内容から判断して、人と金を投入すれば、技術教育・家庭科教育に関する現在の問題点の多くは解消するのではないか」などの意見が出された。
永澤悟
野本勇