日時2015年 6月 13日(土)14:00〜17:00
会場 八王子学園(工作室)

< 加工学習で製図をどの程度まで学ばせるか >


     6月に入り、うっとうしい天気が続いている。研究会当日は蒸し暑い陽気であったが、空調設備の整った快適な会場で熱心な討議が繰り広げられた。  さて、今回は、作品製作にはつきものの図面をどのように扱い、指導を進めていくかという点について、2人の実践報告をもとに、製図学習の展開のしかたに焦点をあてて討議をした。

@加工学習での製作図の重要性を意識しながら学ばせる          野本勇
 ものを加工するには図面が必要不可欠なことは言うまでもない。したがって、加工学習に取り組ませるにあたっては、図面の理解は欠かせない。このことを踏まえたうえで、加工学習の前に製図学習に取り組ませている。図面の必要性やその果たす役割を理解させることから製図学習を始め、図面には規格が必要であることを押さえ、必要最小限の製図のきまりまで指導している。構想図によく利用される等角図やキャビネット図については、さいころの形(立方体)をこれらの図でかかせることから始めている。そして、製作図に使われている第三角法による正投影図のかき方まで指導している。
A製作図が正しくかけるまでの指導を大事にする             藤木勝
 久しぶりに中学校での授業に取り組んでいる。1学期から2学期いっぱいを使い、加工学習でテープカッターの製作を取り上げる計画で授業を進めている。製作の前に自分が作る作品の製作図をかかせる予定である。その準備段階として、4月から製図学習に取り組ませている。その内容は、キャビネット図・等角図・第三角法による正投影図それぞれの特徴と、それらのかき方を身につけさせるための練習である。製図学習の最初に展開図についての学習を入れてみた。一辺が5cmの立方体の展開図(のりしろつき)を工作用紙にかかせ、はさみあるいはカッターナイフで切り抜いて組み立てるのである。ところが、定規を使ってまっすぐな線が引けない、切断線に沿って曲がらずにきれいに切ることができないといった生徒が少なからずいることを目の当たりにし、指導をていねいにする必要性を痛感している。


   その後の意見交換では、正投影図の指導のしかたと製作図の取り扱い方の2点が討議の中心となった。これらについて、おもだった意見を紹介しておく。
 「教科書には第三角法による正投影図の説明が載っているが、これだけでは教師の説明で理解できる子どもがどのくらいいるか。やはり、投影の原理からきちんと説明しないと、子どもの理解はむずかしいのではないか」、「3枚のベニヤ板を用意し、それらを立画面・平画面・側画面にあたるように配置して、正面・上・横の3方向から見た生徒の顔の輪郭をベニヤ板にかき込んで示すという手法を取り入れている。これだと、生徒は興味・関心を示すので、正投影図の理解に大いに役立っていると思う」。
   「現行の教科書で使われている製作図は、組立図は等角図で、部品図は正投影図でという例が多いが、やはり、製作図は第三角法による正投影図で表すということをしっかり学ばせたい」、「製作前に自分の作るものを図で表し、その図をもとに製作を進め、作品を完成させるという手法を多くの先生方はとっていると思う。そうではなく、製作前には製作図が読めるだけの必要最小限の学習だけ扱い、作品完成後に改めて製図学習を取り上げ、完成作品を図で表現するという手法も許されるのではないか」。
 「本日のテーマである製図学習について、現行の学習指導要領には『材料と加工に関する技術を利用した製作品の設計・製作について、次の事項を指導する』として、『構想の表示方法を知り、製作図をかくことができること』とある。同じ部分が、平成10年12月告示の学習指導要領には『製作品の構想の表示方法を知り、製作に必要な図をかくことができること』となっており、内容の取扱いに『等角図、キャビネット図のいずれかを扱うこと』とのただし書きがつけられている。さらに、平成元年3月告示の学習指導要領には『製作品の構想表示の方法を知り、製作に必要な構想図と製作図をかくことができること』となっており、内容の取扱いに『構想図及び製作図については、等角図、キャビネット図及び第三角法によってかくことを標準とする』とのただし書きがつけられている。なお、平成元年版の学習指導要領では、3年の授業時間が週あたり2〜3時間なのだが。目の前の子どもの実態を踏まえて、指導内容や指導計画を立てることが大事なのは言うまでもないが、その前に学習指導要領に書かれていることを細部まで見逃さずに見ておくことも大切なのではないか」。等の意見が出された。

 
 
 
永澤悟  
野本勇 isa05nomoto@snow.plala.or.jp