日時2015年 5月 16日(土)14:00〜17:00
会場 和光学園

< 社会状況の変化にあわせた教材選定 >


     新年度が始まって1カ月余り経過し、授業も軌道に乗ってきた時期に5月の定例研究会が行われた。今回は、今夏の全国大会のプレ集会としての位置づけで開催されたこともあり、かなり多くの参加者があった。また、この日の会場ははじめての使用である。当日は研究会の開始直前まで大会開催案内(大会チラシ)の袋詰め作業が行われており、大会へ向けて、熱のこもった討議が繰り広げられた。
   さて、今回は、4月の定例研究会で紹介された教材の「LED 充電機能つき手回し発電機」を実際に製作してみたうえで、教材選定に対する考え方や加工技術を高めさせるための指導上の工夫点などについて検討してみた。材料の準備および製作指導、問題提起はいずれも会場校の亀山俊平氏である。

○ 教材「LED充電機能つき手回し発電機」の製作とその見直し  亀山俊平(和光学園)
  今回、参加者に製作してもらった教材は、ここ数年、3年後期の授業で取り上げている。この教材は生徒にも大変好評で、2011年3月の東日本大震災の際には大いに役立った。この教材の LED ライトは着脱式で、本体側面の USB 端子に差し込むようになっている。接続コードを使って、携帯電話を USB 端子につなげば、携帯電話の充電もできて、生徒も重宝していた。ところが、社会状況の変化に伴って、スマートフォン(スマホ)が携帯電話に取って代わるようになったが、この教材はスマホの充電には対応していない。この教材の魅力をどこまで持ち続けられるか。
  亀山氏からこの教材の説明を受けた参加者は、渡された資料を参考に作業に取りかかり、全員が2時間足らずで作品を完成させた。以に作業手順の概略を示しておく。    
@基板の加工 
 市販の穴あき基板を所定の形・大きさに切断した後、所定の場所に直径2mm の穴をあける。この穴は USB ソケット固定用である。 
A基板に部品をハンダづけ 
 3端子レギュレーター・コンデンサ・ダイオードなどの部品を基板の所定の場所にハンダづけする。これで、充電回路(安定化電源回路)が完成する。 
Bハンダづけ不良の有無の点検 
 手回し発電機を基板につなぎ、規定の電圧(5.0V ±0.1V)が出ているかを確かめる。
C発電機を基板に固定 
   手回し発電機を基板の所定の場所にねじで取りつける。
Dケースの加工 
 ケース本体の底面および側面に穴をあけ、やすりやカッターを使って、所定の形と大きさに削る。
Eケースへの基板の取りつけ 
 基板をケースに組み込んでみて、手回し発電機 固定用のねじ穴の位置4カ所に印をつけ、直径3.5mm の穴をあける。その後、ねじで発電機をケースに固定する。 
亀山氏は、ケースのふたの裏側に回路図(実体図)を印刷した紙を貼るように生徒に指示するなど、さりげない工夫をされている。これは、作品を使用中にハンダづけ部分がはずれたような場合、図を見て自分で直すことができるようにという配慮からである。また、「使用した基板はランド間が IC ピッチでハンダづけが難しいが、この学習以前にテーブルタップの製作などですでにハンダづけを経験済みなので、さほど問題ない」との補足説明が亀山氏よりなされた。 
   製作後の討議から、ハンダづけに関する意見を整理してみると、「部品を基板の穴に差し込んで、裏側でハンダづけするので、回路図と実際の配線が結びつきにくい。
 そこで、基板の表面(部品の実装面)に回路図を記して、それを参考にしてハンダづけさせ、少しでも作業ミスをなくす」というものから、「回路図にあわせて厚紙に銅箔テープを貼ってハンダづけさせる。これだと、回路図と実際の配線が結びついてわかりやすい。その場合、部品の足は厚紙に穴をあけて裏側に通し、そのまま折り曲げておくようにする」という工夫の紹介まであった。なお、「完成品の写真や実物見本を参考に、正確にハンダづけできるように指導することも大事だが、ハンダづけで何を考えさせるのかが大切で、ここを抜きにしてはいけないのではないか」という重要な指摘があったことを付記しておく。 
 
 
 
 
 
永澤悟  
野本勇 isa05nomoto@snow.plala.or.jp