日時2015年 3月 7日(土)14:00〜17:00
会場 大東文化会館

< 学習指導要領改訂へ向けての中教審審議の動向を注視しよう>


     年度末にあたる3月は、成績評価の作業や事務処理などで学校現場は忙しさに拍車がかかるためか、この日の参加者は少なめであった。

@栽培学習の準備をどう進めるか   野本勇(品川区立荏原第六中学校)
 栽培学習に取り組むにあたって、教科の年間指導計画に沿って、新年度が始まる前に、栽培ごよみを作るなどして、準備を進めたいものである。高等学校用の農業の教科書や向山玉雄氏執筆の「たのしくできる作物・野菜の栽培」(あゆみ出版)なども参考にしながら、具体的な授業の進め方を決めてきた。
 授業に先立ち、授業で取り上げる作物を決める。授業を1学期に組むのか2学期に組むのかによって扱う作物が異なるのは当然のことだが、種まきあるいは植えつけの時期には幅があるということを頭に入れておいたうえで、作物を選ぶ必要がある。つまり、夏休みや冬休みなどの学校の長期休業にかからないうちに、種まきから収穫までを終えることができるように、栽培する作物を選んだほうがよいということである。そのようなことから、枝豆(大豆)やインゲンなどを今までに取り上げてきた。
 その後の討議のなかで出てきた意見のおもだったものを記しておく。「栽培学習では、種を準備して、種まきから始めるか、市販の苗を購入して、苗から育てるかのどちらかだろう。そのどちらを選ぶにしても、栽培を失敗させないで、収穫まで持って行くことが大事である」、「どんな野菜が栽培学習で取り上げる作物に向いているだろうか。果菜類ではトマト(ミニトマト)やナスなど、根菜類ではサツマイモやダイコンなど、葉菜類では小松菜あたりか。ただ、栽培の醍醐味を味わうには果菜類か根菜類が適当で、葉菜類では少し物足りないのではないか」、「ダイコンを例にとると、畑での栽培より袋栽培のほうがよい点があることが浮き彫りになってくる。畑で育てる場合、自分のものと他人のものとの区別がつけづらく、畑の状態によっては二股に分かれたものや曲がったものができるということもある。それに対して、袋栽培の場合、どれが誰が栽培しているものかの区別がつけやすく、市販の土を袋につめれば、まずきれいに育つ」、「小学校でもアサガオやヘチマ、サツマイモやトウモロコシなどの栽培が取り上げられることがあるが、生活科あるいは理科の学習の一環として、花の観察などが主目的であり、できた作物を利用するという考えはない。したがって、栽培学習を始めるにあたっては、単に小学校での栽培体験があっただけという認識のもとに、授業計画を立てることが肝心だろう」、「栽培学習では、種まき、植えつけ、草取り、水やりなど、1回あたりの個々の作業にかける時間はせいぜい10分か20分程度で済むことが多く、1単位時間をまるまる使わなければならない場合は少ない。また、天候に左右される作業もある。したがって、他の単元との同時並行学習となると考え、授業計画を立てる必要がある」、「栽培学習は全体として最低限10時間ほどあれば可能で、15〜20時間もあれば十分と思う」。  

A学習指導要領改訂へ向けて産教連が当面取り組むべき課題について考える  金子政彦(常任委員)
学習指導要領の改訂が中央教育審議会(中教審)へ諮問されてから4カ月ほど経った。この間、昨年(2014年)12月および今年1月の定例研究会で学習指導要領の改訂問題を取り上げて検討してきている。この問題を取り上げるのは今回が3回目である。学習指導要領改訂にかかわる中教審のこれまでの動きをまとめた資料をはじめとして、全部で5種類の資料を提示して問題提起した。  諮問を受けた中教審では、審議の中心となる初等中等教育分科会教育課程部会の下に教育課程企画特別部会を設置して、各学校種または各教科・科目ごとの改訂の方向性に関する検討に先立ち、新しい時代にふさわしい学習指導要領等の基本的な考え方や、教科・科目等のあり方、学習・指導方法および評価方法のあり方等に関する基本的な方向性の検討から始めた。中教審のこれまでの討議の中で注目すべき発言をあげておく。「各教科の議論を丁寧に行うべき。例えば,家庭科の男女必修化後の世代では,出生率の改善や育児への参画の観点で成果が出ているという声もある。いわゆる五教科以外の教科についても丁寧な議論が必要」。  問題提起を受けて、産教連としてこの問題にどう取り組んでいくかを討議した。おもだった意見をあげておく。「資料にもあるが、技術・家庭科の授業はまさに危険と隣り合わせの場合がいくつもある。40人の生徒を相手に授業を進めるのはいかに大変なことかを一般の人にわかってもらいたい。35人学級の推進は必須だと思う」、「モノが身の回りにあふれている現代社会では、自分で作らなくても、市販のものを買えば、それで生活が成り立つという風潮が強い。それに逆らって、ものづくりの授業を進めていくのは大変である」、「中学校時代の技術・家庭科の授業時間数の関係から、今の若い教員に高い技術を求めるのは無理。若い教員がどんな意見を持っているのか、ぜひ聞いてみたい」、 「中教審の委員をはじめとして、一般の人々に技術・家庭科の大切さをどうやって訴えていくか、その手立てを考えたい」、「『アクティブ・ラーニングは教科で区切れないことも多いが,教科横断的な学びを進めるには時数が限界。既存の教科の枠にこだわらない見直しをすべき』という意見を述べた中教審委員がいたようだが、技術・家庭科はアクティブ・ラーニングそのもののはず。この意見の意図することをもっと広げていく必要がある」



 
永澤悟  
野本勇 isa05nomoto@snow.plala.or.jp