日時2015年 1月 17日(土)14:00〜17:00
会場 八王子学園

< エネルギー変換の学習で導入の授業をどう展開するか>


     1月の定例研究会が行われた17日は、阪神・淡路大震災からちょうど20年目にあたる。この日の参加者は少なめであったが、熱のこもった討議が繰り広げられた。今回のテーマはエネルギー変換の学習の導入を効果的に進めるにはどうするかである。また、先頃諮問のあった学習指導要領改訂に絡む問題についても、検討してみた。

@エネルギー変換の学習の導入をこう展開する  野本勇(品川区立荏原第六中学校)
 エネルギー変換については、これまで電気エネルギーを中心に取り上げて学習を展開してきた。最近は、教科書の記述に沿う形で導入段階の授業を進めている。授業の進め方はおよそ次のようである。小学校での学習の復習から始め、簡単な教師実験を交えながら「エネルギーとは何か」についてまとめる。次いで、自然界のエネルギーをどのように利用して技術の発達が成し遂げられたのか、どのように化石燃料を用いた外燃機関・内燃機関へと発達したのかについてそれぞれ取り上げて説明し、最終的に電気エネルギーへとどのようにつながっていったのか、ところどころに教師実験を織り交ぜながら触れる。その後、電気エネルギーに関する学習へと進む。以前は取り扱っていた内燃機関に関する学習を現在のエネルギー変換の学習の中にどのような形で組み込むか考えているが、今の授業時数ではむずかしい。
 その後の討議で出された意見の中からおもだったものをあげる。「導入段階の学習にどのくらいの時間をかけ、どんな内容を扱うかだが、盛りだくさんにあれもこれもと取り上げずに、たとえば、エジソンの電球の発明に絡む技術のように絞ったほうがよいのではないか」「提案の中にエネルギーの変換効率について触れている部分があった。それならば、いろいろ取り上げることはやめ、変換効率を向上させるために人間がいかに智恵を絞ってきたかについて、実験を交えながら、その技術の歴史をたどるという進め方のほうがよいのではないか」「シャープペンシルの芯に電流を流し、加える電圧を変化させることで、電気エネルギーが光エネルギーに変わることが簡単にわかる。このような実験をできるだけ織り交ぜ、子どもが学びたいと思えるような導入学習を展開したい」「教科書の単元の最初にあるような自然界のエネルギーの利用の部分は、何も導入で取り扱う必要はない。ひととおりの学習が済んで、まとめの段階で取り上げても何ら差し支えがないと思う。むしろ、そのほうが学習効果があがるのではないか」。

A学習指導要領改訂へ向けて産教連が当面取り組むべき課題について考える  金子政彦(常任委員)
  2014年11月20日、学習指導要領の全面改訂が中央教育審議会(中教審)に諮問された。英語教育の充実や日本史の必修化などが諮問内容の柱となっている。中教審は、平成28年度中に諮問に対する答申を行い、平成32年度以降、小学校から順次実施するとしている。昨年(2014年)の全国大会(第63次技術教育・家庭科教育全国研究大会)でも、次のような問題が技術教育・家庭科教育にあることが指摘されている。
 ア.技術・家庭科の授業時間の増大を望む声、とりわけ、3年の週1時間を他の学年並みに週2時間にしてほしいとの切実な願い、
 イ.地方の学校を中心に広がりを見せる複数校兼務の実態、
 ウ.専任教員の不足を非常勤講師で埋め合わせることからくる諸々の弊害、
 エ.製作実習を進めるには多すぎる1学級あたりの生徒数。
これまでの討議を振り返ると、「小学校の5,6年に家庭科の時間が設定されているが、以前は週2時間(年間70時間)あったのに、現在は週2時間が確保されていない(5年:年間60時間、6年:年間55時間)。小学校段階でのこうした現状を踏まえたうえで、中学校の技術・家庭科の授業を考えたとき、全学年で週2時間(年間70時間)の確保は必至ではないか。とりわけ、3年の授業の週2時間確保の実現を望みたい。ただ、3年の授業の実情は他教科の教員にすらわかってもらえず、ましてや、一般の人たちになかなか理解してもらえない現実がある。そう したなかで、技術教育・家庭科教育の必要性を一般の人にどこまで理解してもらえるか」これらの点を踏まえ、「技術・家庭科3年の授業時数の週2時間の確保」を最重要要求事項として位置づけ、その実現へ向けて運動を進めていくべきではないか。
  今後の運動の進め方について意見交換し、当面、次のようなことを進めていくことを確認した。「技術教育・家庭科教育に携わる教員に関心を持ってもらうための手立てを講じる。具体的には、メーリングリストのサンネットで取り上げる。産教連のホームページに専用のページを設ける。東京サークルの定例研究会や全国大会のプレ集会で取り上げる」それ以外にも、新聞社などのマスコミにもはたらきかける、中教審委員へのメールや手紙で要望事項を伝えるなどがあげられた。


 
永澤悟  
野本勇 isa05nomoto@snow.plala.or.jp