日時2014年 9月 6日(土)14:00〜17:00
会場 八王子学園

<100円アンプを活用して楽しいエネルギー変換の授業の展開を>


  夏の大会後最初の定例研究会である。ただ、残念なのは、参加者の少なかったことである。これは、9月は、体育祭や文化祭などの学校行事の準備で、ただでさえ忙しい学校現場にさらに拍車がかかったせいもあるだろう。  さて、今回は、産教連通信第197号(2014年7月20日発行)に掲載された 100円アンプについて、この教材の紹介者である藤木勝氏(東京学芸大学)が、その現物を会場に持ち込んで、いろいろな実験を交えながら、この教材の活用のしかたについて検討を加えてみた。あわせて、夏の大会で示された課題について、今後の研究活動の進め方についても、検討してみた。

@100円アンプの教材としての活用性を探る                藤木勝

 藤木氏は、会場に到着するとすぐに、用意してきたスピーカボックスと例の100円アンプ(電池は別売り)を取り出して、実演の準備に取りかかった。会場へ来る途中で購入したという別の100円アンプも携えていた。100円アンプ・スピーカボックス・小型のポケットラジオを接続してみると、かなりの音量で聞こえる。このアンプをエネルギー変換の教材としてどう活用できるか、みんなで検討してみたいと、実演後に藤木氏は切り出した。  その後は、会場校の永澤悟氏の協力もあって、さまざまの部品が用意され、それらを1つ1つこのアンプにつないで実験しながら、授業への活用法を検討してみた。「コイルを自作させた手づくりのゲルマニウムラジオの製作を行い、それに1石増幅器をつなげたものを作 らせたことがある。増幅器を使うと、確かに音は大きくできる。このことから、増幅すれば、いくらでも音を大きくできると思いがちだが、それにも限度があり、それは使用する電池によって決まってくる。教科書に記載されている“増幅”の説明のしかたは不十分」「このアンプを分解してみればわかるように、IC1個といくつかの抵抗器やコンデンサが使われているだけである。このしくみはブラックボックス扱いにせざるを得ないが、それにしてもこれだけの性能のものがたった100円でできるというのはすごいの一言につきる」。  研究会の後半は、この 100円アンプをエネルギー変換の授業にどう活用するかという観点から、考えられる実験を繰り返しやってみた。2つのスピーカ同士を直接つなぎ、片方をマイクとして使い、もう片方のスピーカから出る音声の大きさと、2つのスピーカの間に100円 アンプをつないで同様の実験をしてみた場合の、スピーカから出る音声の大きさを比べてみると、明らかに音の大きさがちがうことがわかる。この実験を手がかりに、スピーカ・マイクロホン・アンプのしくみとはたらきにせまる授業が考えられるのではないか。さらに、光通信への利用を視野に入れ、スピーカ同士をつないぎ、その間にこの100円アンプとLEDを入れてみたときのLEDの光り方を観察することも試してみた。ここでは、「実験用具を渡して、生徒の好きなようにやらせてみるのもおもしろい。ただし、教師側で実験の意図を明確に持ち、見通しの持てる授業計画が立てられていないと、単なる遊びの実験に終わってしまうおそれがあるので、注意する必要がある」という発言があったことを付記しておく。  その後、ダイナモで発電した電気の音を聞く実験(ダイナモをアンプを介してスピーカにつなぐ)、直流モータを発電機として使い(モータの軸にハンドドリルを固定してモータを 回転させる)、その発電の様子をスピーカの音やLEDの光り方で確認するなど、考えつく実験をいろいろと試してみた。  こうした数々の実験をやりながら、授業での取りあげ方のコツも検討していった。たとえば、オシロスコープを使って交流の波形を見せる場合でも、いきなり見せるということはしない。まず、ダイナモにスピーカやLEDをつないで、音や光でその様子を確認してから、オシロスコープで波形を見せるようにするとよい。そのようなときにこの 100円アンプを使えば、効果的である。安価でもあるので、班に1つ用意できる利点もあり、使う教師の側の工夫次第で、使い方が広がる。

A第63次技術教育・家庭科教育全国研究大会での今後の課題への取り組み 金子政彦

 今夏の大会最終日のおわりの全体会で、産教連が当面取り組むべき今後の課題について、2点にわたって問題提起がなされた。これをどのような形で具体的に進めていくか、問題提起した。  大会では、技術教育・家庭科教育をめぐる問題点、特に、中学校の技術・家庭科を取りまく問題点が明確になった。1つは、この教科を担当する専任教員がいない学校の増加が顕著になっていることである。その対応策として、非常勤講師の配置と臨時免許による免許外教科の担当で切り抜けてきたが、今回、新たに、複数校兼務発令によって切り抜けようとする事例が増えている状況がある。もう1つは、満足のいく技術教育・家庭科教育を行うには、現行の授業時間数ではとうてい足りないということである。これは以前から指摘されてきている。  前記の2点を踏まえ、これからの運動の方法について具体的に問題提起した。「3年の授業時間数を現行の週あたり1時間を1,2年と同じ週2時間にする」ということに運動の内容をしぼり、みんなで智恵を出し合い、実現へ向けて最大限の努力を重ねていってはどうかというものである。これが実現すれば、専任教員不在の学校の解消にもプラスにはたらくのではないか。  その場でこの提案に対する賛同が得られたが、その進め方に対する検討は時間の関係で十分にはできなかった。

 
永澤悟  
野本勇 isa05nomoto@snow.plala.or.jp