日時2014年 5月 10日(土)13:30〜17:00
会場 八王子学園(工作室)
<製作図の指導をどのように進めるか>
今夏(2014年8月実施)の全国大会(第63次技術教育・家庭科教育全国研究大会)の開催案内(大会チラシ)ができあがり、その発送準備の作業を済ませてから研究会を実施した。
この日は、製作学習には欠かせない製作図について、その指導をどうするかを検討してみた。
問題提起は野本勇氏(東京都品川区立荏原第六中学校)である。
@製図学習ではぜひ第三角法の指導を 野本勇
身のまわりにあるさまざまな製品には種々の工夫が凝らされており、そこには技術の進歩が関わっている。その製品に使われている材料の特徴をはじめとして、ものづくりに必要な知識をひととおり学習したうえで製作学習に移る。そのものづくりでは、当然ながら図面が必要になる。技術・家庭科の学習ではものづくりがかなりの比重を占めるので、製作図に関する学習は早めに始めたほうがよい。検定教科書では、その製作図に等角図が多用されている。ところが、等角図では、複雑な形を正確に表現することは無理である。等角図は、設計段階で構想を表示するにはよいと思うが、製作図には第三角法による図面を用いたい。ただ、第三角法を用いた製作図にはかき方のきまりが多く、加えて、線の太さの使い分けがうまくできない生徒が多いなど、正確にかき表すのがむずかしい。そこで、無理に図面がかけることはめざさず、図面が読めればよしとするにとどめてもよいのではないか。なお、製図学習には5時間ほどかけて指導している。
その後の討議では、活発な意見交換がなされた。「以前の学習指導要領では『製作に必要な図をかくことができる』となっていたものが、現行の学習指導要領では『製作図をかくことができる』と変わっている。この微妙な変化を正確に読み取る必要がある。『製作に必要な図』ならば等角図やキャビネット図でもかまわないが、製作図となると、正投影図ととらえる必要がある。したがって、第三角法による図のかき方をきちんと指導しなければならないと受け取るべきである」、「『図面が読めれば、それでよい』という発言があったが、図面が読めるためにはかきなければならないはず。したがって、ある程度の図面がかけるよう指導すべきである」、「製図領域があった頃の検定教科書には斜投影図・等角投影図・正投影図が載っていて、投影の原理についても指導していた。現在は授業時間数が少なくなり、原理的なことは教えずに等角図やキャビネット図のかき方だけを教えている」、「技術・家庭科の教科書には第三角法による正投影図が載っている。ところが、数学科の教科書で扱っているのは第一角法による正投影図である。これは立体を切り開いて展開した図である展開図の学習との関係でそうなっているのだろう」等々。
「画面の手前に置いた物体を画面に写し取る」などと、身振り手振りを交えて正投影図の説明を始める参加者もあった。また、キャビネット図をかくときに奥行きを2分の1に縮める根拠から始まり、等角投影図と等角図のちがいやキャビネット図と斜投影図との差異についての説明を始めた参加者もあった。
最後には、製作図から発展して、今後のものづくりにまで話が及んだ。「今までは、生産者あるいは製作者の立場からものづくりを考えていればよかったが、これからのものづくりは、製作品を使う消費者の立場に立って設計・製作を進める必要がある。つまり、消費者を常に意識してものづくりに取り組む必要があるということである」、「今のものづくりは、ある程度の期間使えば、消耗して製品としての寿命がやってくることを前提に設計・製作されている。ものづくりを行う側がその前提条件を設定している」等々。議論が発展しかけたが、時間の関係で続きは別の機会でということになった。
永澤悟
野本勇 isa05nomoto@snow.plala.or.jp