日時2014年3月 15日(土)14:30〜17:00
会場 八王子学園(工作室)

<情報基礎 座学中心の情報教育をどうする>


 3月の定例研究会は第三土曜日の午後に実施したが、年度末の大変忙しい時期にも かかわらず、かなりの参加者があった。八王子学園で行うのは半年ぶりである。 さて、今回は情報教育をテーマに討議を繰り広げた。問題提起は野本勇氏(東京都 品川区立荏原第六中学校)と会場校の永澤悟氏の2人である。

@情報教育にどう取り組んだか野本勇 勤務校のコンピュータ室には生徒用コンピュータが40台配備され、教師用コンピュータには授業支援ソフトが組み込まれている。新たにソフトを組み込みたい場合には、それがたとえフリーソフトであっても、教育委員会の許可が必要となる。このあたりはどこの公立中学校でもほぼ似たような状況だと思うが、ネットワークの使い勝手がよくない。生徒の個人用フォルダがないため、データ保存が大変やりにくい。このような環境下で、8時間ほどかけて情報技術の授業に取り組んだ。学習内容としては、コンピュータの歴史・情報処理のしくみ・画像処理のしくみを取りあげた。また、タイピングソフトを使っての文字入力の練習に取り組ませ、生徒の学習意欲を維持させてもみた。 その後の討議では、情報教育の取り組み方を中心に、活発な意見交換がなされた。「『○○について調べよ』という学習課題を出すと、今の生徒は、書物を利用して調べるのではなく、インターネットを利用して調べたがる。だから、学校では、図書室を使うのではなく、コンピュータ室を使いたい希望が多い。家庭では、何か知りたいことがあれば、スマホやケータイでネットに接続して簡単に調べられるのだから、当然と言えば当然かもしれないが。ネットを使う場合、その情報の信頼性がどの程度のものかはほとんど考慮していないのが現実。このあたりを考えていかねばならない」、「今、ネットに関係したことが社会問題になっている。これはネットワークについての基礎知識が不足している何よりの証拠だろう。学校教育のなかでネットワークのしくみについてしっかり教えるべき。ネットワークとはどのようなものかをわからせ、使うにあたって、どのような危険性があるのかまできちんと指導すべき。情報モラル、著作権にかかわること、セキュリティーも理解させる必要がある」、「2進数については数学科で取りあげる内容であり、エネルギー変換は理科の学習内容と深い関連がある。数学科や理科とも連携し、そのなかで技術・家庭科がどの部分を担うのが適切なのかをきちんと議論すべきだろう」、「コンピュータを使ううえで、ファイルやフォルダの概念をしっかり身につけることが大切だと言うが、最近のスマホなどでは、そうした概念を意識することなく扱えるようになってきた。今後はこの傾向がさらに進むだろう」、「現行の学習指導要領では、『情報に関する技術』の学習内容として3項目があげられている。1つ目の『情報通信ネットワークと情報モラル』については、小学校および中学校の学習指導要領の総則の項の規定から考えても、小学校段階から学校教育全体のなかで取り組むべきで、技術・家庭科だけが担うとするのは不適切。2つ目の『ディジタル作品の設計・制作』については、それぞれの学校の実情にあわせ、必要なアプリケーションソフトを使っての作品づくりに取り組めばよい。3つ目の『プログラムによる計測・制御』については、エネルギー変換の学習と結びつけて取りあげるのが適当である」このような意見が出された。次の学習指導要領の改訂に間に合うよう、現場からの声を積極的にあげていくことを痛感した討議の時間であった。

 A技術室を使う情報教育の取り組み永澤悟 学校教育のなかに各種情報機器が充実しつつあるが、現実的には問題点もある。勤務校のような中高一貫校では、高校の情報科の授業のため、コンピュータ室の使用は高校生が優先され、中学生は普通教室あるいは技術室での授業とならざるを得ない。そこで、班に1台の4ビットマイコンを用意し、プログラミングの学習に取り組ませてみた。3年生での学習のため、2週に1回の授業ペースなので、前回の学習内容を忘れがちになる。それを防ぐためもあって、学習課題を工夫することにした。この教材は、プログラミングのミスで動作しなかったとき、その原因を簡単にはつかめないのが難点である。「この教材は計測・制御の学習と結びつけやすいのが何よりである「この教材を扱う場合、ハードとソフトの両面から考えていく必要がある」などの意見が出された。永澤氏は、「教材自体を組立・製作することから考えてもよいかもしれない。これは今後の課題にしたい」と述べていた。


永澤悟  
野本勇 isa05nomoto@snow.plala.or.jp