日時2014年1月 18日(土)14:30〜17:30
会場 國學院大學久我山中学高等学校

加工学習で大切にしたいことをどう指導するか


  1月の定例研究会は、大寒を間近に控えた第三土曜日の午後に行った。この時季は1年中で最も寒いようで、定例研当日の朝、東京近郊でも小雪が舞ったとの情報がもたらされた。  さて、今回は表記の学校を会場にして、加工学習をテーマに討議を繰り広げた。問題提起は野本勇氏(東京都品川区立荏原第六中学校)と会場校の石塚千鶴氏の2人である。

@木製テープカッターの製作上の工夫          野本勇
 本製作に入る前、檜の間伐材(丸太材)ののこぎりびきをさせ、切断後の木材を使い、木材の構造や性質の学習をする。その後、木製テープカッターの製作に移る。木目のよさと加工のしやすさを考え、厚さ15mmのパイン集成材を材料に選んだ。材料に多少の節があっても、さしつかえない。2種類の幅にカット済みの材料を渡し、作らせた。もう何年もこの教材を取り上げてきているが、今回は部品の接合に釘打ち(黄銅釘を使用)の箇所も設け、木工用接着剤と併用とした。製作にあたって、基本形を提示し、自由設計ができる箇所を設けてみたところ、デザインをいろいろ工夫した生徒が何人も現れた。この教材はお薦めだと思うので、今後もさらに工夫を重ね、実践に取り組みたい。
 「切削や接合のことを考慮すると、加工材料としての板材の厚さは10mmや12mmでは心もとなく、やはり、最低でも15mmはほしいところである。その点で、この材料の選定はすばらしい」、「この教材は横びきが主体となっていて、さらに、のこぎりびきの失敗がその後の修正によって目立たないようにできるデザインになっている。これならば、完成したら、だれでも持ち帰りたくなるはず」などと、この教材のよさを認める意見が相次いだ。
 野本氏は、討議のなかで「生徒からの要望もあり、教科書の記述をある程度意識しながら授業を進めている」と、述べていたが、「教科書の記述にあまり縛られる必要はないのではないか。学習指導要領には『何をどこまで指導せよ』などということは細かく記述されていないのだから、教師側の判断で何をどの程度まで指導するかを決め、指導計画を立案すればよいはず。教科書の記載事項をもらさず指導することは必要ない。現在の授業時間数では、教科書の記載内容を隅から隅まで教えきるのは無理である」との意見も出された。また、のこぎりびきのやり方を中心に、教科書の記述の問題点を指摘する意見も出された。

 Aボックス型ラジオの製作                石塚千鶴
 2年の1学期から2学期へかけての8カ月間ほどを使い、木製のボックスに基板とスピーカを組み込んだ、ラジオの製作に取り組ませている。1学期は木製のボックスを作るための木材加工の学習を、2学期は基板をハンダづけしてラジオを作るための電気学習をそれぞれ展開している。木製のボックス作りでは、いきなり材料を渡しての製作という無謀なことはせず、練習材を使ってののこぎりびきをさせるなかで技能の習熟を図るようにしている。最後に、練習材を使ってののこぎりびきの実技テストを実施し、自分の技能レベルを把握させる。ボックスの製作にあたり、自分の技能レベルに応じて、デザインの変更を認めることにしている。ラジオの製作では、難易度の異なる発展課題を3種類用意し、作業進度にあわせ、易から難の順に取り組ませている。
 石塚氏は、「ボックスの製作ではのこぎりびきの善し悪しが作品の完成度を左右するが、練習材を使っての練習で技能レベルが上がり、切断時の失敗は目に見えて減っている。切断後の寸法の修正にはかんなを使わせている。ただ、刃の調整は教師のほうで行い、生徒にはさせないようにしている。そのため、刃の調整済みの予備のかんなを何丁か準備しておくことにしている。また、多くの生徒が基板のハンダづけに取り組んでいるとき、ボックス作りが未完成の生徒のための個別指導にあたっている」と補足説明をされた。石塚氏が練習材を用いて技能の習熟を測っている点について、賞賛する声が相次いだ。「材料の固定がしっかりできるか、引き込み角を絶えず意識して作業できるか。のこぎりびきの成否はこの2つにかかっている」、「のこぎりの切れるしくみやのこぎりびきのやり方の説明については両刃のこぎりを使い、実際の切断には胴つきのこぎりを使うという手もあるのではないか」などという意見も出された。
 「今の子どもは昔に比べて生活体験が不足している。そのことを踏まえ、同じことをやらせても昔より数倍以上時間がかかることを頭に入れ、指導計画を立案しないといけない」、「生徒が取り組む教材については、教材研究時に試作してみるなど、事前に確認するのを忘れないようにする。そのことで気づく点も多々ある」と若い教員が参考になる意見も出され、充実した研究会であった。


永澤悟  
野本勇 isa05nomoto@snow.plala.or.jp