日時2013年4月13日(土)14:00〜16:00
会場 東京学芸大附属世田谷中学校)
(技術室)
内容 教材見本を前に今年度の授業のポイントをさぐる
4月になると、教師と生徒との新たな出会いがある。どの教師も「今年はこの教材でいこう」などという思いを心に秘め、年度はじめの授業に臨んでいることと思う。東京サークル主催の定例研究会は、今回から会場を標記の学校に移した。実は、この会場で定例研を行うのは 2回目で、2009年 9月以来のことである。
この日は、参加者各自が今年度の年間指導計画を持ち寄り、情報交換をするとともに、取りあげようとしている教材についての検討を加える予定であったが、思ったほどの参加者が集まらなかったため、研究部で用意した資料をもとに討議を進めた。年度はじめの研究会でもあるので、近況報告をかねての自己紹介から始めた。勤務条件や待遇面での非常勤と専任とのちがいなどの話が出され、技術・家庭科を取りまく状況の厳しさを改めて感じた。
エネルギー変換の教材として有効なテーブルタップ研究部・野本勇,金子政彦
テーブルタップは日常生活のいろいろな場面で使われており、教材としてはおなじみのものである。市販のテーブルタップには、よく見かけるごくふつうのもの以外に、パイロットランプつきのもの、中間スイッチつきのものなど、さまざまなタイプのものがある。最近は、内部の構造がわかるようになったスケルトンタイプのものまで現れている。テーブルタップの教材としての有効性については、産教連主催の全国大会や「技術教室」誌(現在は休刊)で幾度となく取りあげられてきている。このテーブルタップは、単に組み立てるだけならば3〜 4単位時間もあればよいが、製作に付随する諸々のことを学ばせるならば8時間程度は必要になる。結論的に言うと、テーブルタップは次のようなことが学習できる優れた教材と言える。
@配線器具の定格とテーブルタップ使用上の注意事項
Aコードの芯線の本数のちがいと許容電流との関係
Bコードの種類とその使い分け
C単線・撚り線のちがいとその使い分け
Dテーブルタップの各パーツに隠された数々の工夫
Eテーブルタップをもとに考える発電・送電・電気の供給経路
Fテーブルタップを使って考える待機電力の問題
G製作(組立)しながら考える工具使用上のコツとなぜそうするかの理解
その後の討議では、指導法の工夫や教材としての有効性など、さまざまな角度から意見が出された。「パイロットランプつきテーブルタップには LEDや保護抵抗が使われるわけだから、パイロットランプを使うことで回路学習までできる。したがって、これをテーブルタップで学べることの一項目として加えてよいのではないか」「パイロットランプつきテーブルタップを使って指導する場合、私は次のようにしている。
まず、3V のボタン電池を使ってLEDを光らせる。次に、このLED を 100Vで光らせようとしたら、電流制限用の抵抗器が必要になるはず。こうすれば、使用部品のはたらきも理解させられる」「パイロットランプつきテーブルタップを製作させる場合、プラグ受けの部分に LEDや抵抗器を新たに組み込むわけだから、安全性に配慮することは当然だろう。私は、組み込む部品をハンダづけした後、熱収縮チューブを被せてしまうことにしている」「テーブルタップは家庭にいくつあっても多すぎるということはないはず。そんなことは気にせずにどんどん作らせよう。その場合、壊れたテーブルタップを家庭内にある工具を使って修理できることも想定して指導することも必要。つまり、どこの家庭にもあるはさみ・カッターナイフ・ねじ回しだけあれば作れることを体験をとおして学ばせることも大事だろう。そのうえで、圧着端子や専用の工具類を使った方法で最終的にきちんと製作させることが重要なのではないか」「提案されたような内容を盛り込んだテーブルタップづくりの学習を進め、完成品を使って待機電力の問題まで広げて学習を展開するとなれば、15時間程度は必要となる」このように、討議を通じて、テーブルタップは指導する教師の考え方次第で広がりのある学習が展開できることを再確認した。
最後に、テープカッターの生徒作品を持ち込んだ亀山俊平氏(和光中学校)が、指導のポイントなどを説明されたが、時間の関係で十分な検討はできなかった。次回の研究会で改めて報告してもらうこととした
3生徒作品を手に説明する亀山氏
野本 勇 isa05nomoto@snow.plala.or.jp
金子 政彦 mmkaneko@yk.rim.or.jp