日時2013年3月 9日(土)14:00〜17:00
会場 麻布学園(技術室)
麻布学園(技術室)

内容 栽培のこつ教えます


3月は第二土曜日の午後に研究会を行ったが、研究会当日は春らしい暖かな日であった。この日の研究会場の麻布学園は東京メトロの地下鉄日比谷線広尾駅から徒歩で10分足らずのところにある。定例研の会場として麻布学園を利用させていただくようになってから久しい。広尾駅から会場校へ向かう途中に有栖川記念公園があり、時間に余裕のあるときは静かな公園の一角で一休みすることもたびたびであった。また、研究会終了後、広尾駅近くの飲食店に研究会参加者が集まり、飲んだり食べたりしながら、研究会の続きをやることがしばしばあったことも思い起こされる。

さて、今回の研究会では生物育成を取りあげた。しかし、残念なことに、年度末の成績評価や事務処理で忙しいためか、参加者が少なかった。学習指導要領が改訂になり、栽培学習が生物育成として必修となって、1年が経とうとしている。栽培学習では、栽培する作物を枯らすことなく育て上げることが、授業を成功へ導くカギとなる。

そのためのコツを伝授することを主眼に、研究会を進めた。問題提起は会場校の野本勇氏である。 栽培学習で失敗しない秘訣野本勇栽培学習では、実習は技術室ではなく、外で行うのがふつうである。実習の内容によっては、授業時間の全部を実習にあてる必要がないこともよくある。そのようなときは、教科書に記載されているような学習事項を技術室で学習した後に、外で実習する。このような教室での学習にあてる時間は、あわせて8時間程度である。水のはたらき、土の種類と土の役割、肥料のはたらきが学習内容のおもなものである。授業時間が現在より多かった頃は、何種類かの土を顕微鏡を使って観察させたり(写真 土の顕微鏡画像)ということも行って いた。果菜類ではトマト・ナス・キュウリ、葉菜類ではホウレンソウ・春菊といったものを取りあげた。また、栽培にあたっては、日照時間や種子の発芽温度・苗の生育温度が重要になってくる。種子にも寿命があるので、それを頭に入れて種まきをしないと、発芽率が悪くなって失敗する。「種をまいたら、土をどのくらいかければよいか」とか、「間引きをするとき、残す苗と抜いてしまう苗をどうやって選び分けるか」などという、作業上のちょっとした注意事項やコツにあたるものは教科書や指導書には書いてないことが多いので、経験豊富な先輩教師にたずねたりすることになる。 この日の研究会のテーマが栽培上のコツの伝授だったので、そのことを中心に討議が進められた。はじめに、「技術・家庭科の授業は週に1回なので、栽培学習を進める場合、たとえば、水やりなど、授業中の作業だけでは足りず、放課後などに作業をすることも必要になってくる。そうなると、生徒だけでなく、教師の負担も大きくなる。そこで、あまり手をかけなくても、うまく育つものを選んで栽培することが賢いやり方と言える。そのためには、栽培する作物の生育上の特徴(発芽温度や生育温度、必要な日照時間など)をあらかじめよく知っておくことが大切になってくる」(写真 討議の際に参考にした教科書類)との補足が野本氏よりなされた。「加工学習では、失敗した生徒にかわりの材料を渡して、 やり直しをさせることが比較的簡単にできる。ところが、栽培学習では、苗が途中で枯れたからといって、そう簡単にかわりの苗を渡すことはできない。失敗をさせないためにも、考えられる手だてをいくつも準備しておくことが大切なのではないか」「定期試験で、春菊・ホウレンソウ・小松菜の3種類の野菜の実物を提示し、どれがどの野菜かを答えさせるという問題を出題した先生がいるとのこと。近頃の生徒は、実際に栽培していても、正しく答えられないことがあるそうだ」「近頃はキット教材が大はやりだそうだが、栽培学習でもペットボトルを利用してハーブ栽培などというお手頃キット(写真 ペットボトル利用のお手頃栽培)があるとか」「のこぎりびきやかんながけ、ハンダづけなどの作業にはこうやると上手にできるというコツがある。そうしたことは教科書や指導書にはなかなか書いてない。市販の手引き書を読んで、自分で身につけるか、まわりにいる上手な人から教えを乞うのが近道である。その意味で、経験豊富な教員が経験の浅い教員にコツを伝授する機会を多く設けてやりたい」などの意見が出された。


野本 勇(麻布学園・技術科) isa05nomoto@snow.plala.or.jp
金子 政彦 (大船中学校) mmkaneko@yk.rim.or.jp