日時2013年 2月16日(土)14:00〜17:00
会場 麻布学園(家庭科室)
麻布学園(家庭科室)

内容  エネルギー変換をどうとらえるか

  
2月の定例研も第三土曜日の午後に行われたが、1月同様、参加者はそれほど多くはなかった。今回は、2人の方の問題提起をもとに、エネルギー変換とは何かということについて検討を加えてみた。

@ 機械領域にかかわるエネルギー変換について考える藤木勝 (東京学芸大 )  身のまわりには、水圧・大気圧・蒸気圧などの圧力に関係する現象が数多く見受けられる。実際、圧力差を利用したもの、圧力変化や温度差を利用したものなどがさまざまな形で実用に供されている。エネルギー変換の学習にあたっては、こうした身近に見られる現象とそれを利用した実用品をいくつか取りあげ、子どもの視野を広げておくことも大切で、これがその後の学習にプラスにはたらく。そのうえで、ベビーエレファントを取りあげてみるのもよいのではないか。この教材は、火を燃やして 写真 右 (ベビーエレファント )湯を沸かし、発生した蒸気を利用して動力が生み出せることを実感できる、すぐれた教材と言える。エネルギー変換の学習で取りあげる価値は十分にある。 藤木氏は、会場に持ち込んだベビーエレファントの走行実験を自ら行った。 15CCの熱湯をボイラーに注入した後、固形燃料に点火して、会場内の床の上を走らせてみると、5分以上も走り続けていた。藤木氏は、「授業時間数が今より多かった頃は1人1人に製作させていた。加工精度が製作後の走行に大きく影響することを実感をもって受けとめられる、恰好の教材である。授業時間数の少ない現在は、製作させるのは無理なので、完成品を教具として使い、エ 写真 2床の上を軽快に走るベビーエレファントネルギー変換の学習の導入部分で使うのも1つの方法である」と、補足されていた。また、検定教科書では、エネルギー変換とは何かということがわかるような記述のしかたになっているかを、教科書の現物を持ち出してきての点検もやってみた。 「圧力差の利用例として取りあげていた、ゴム動力の模型飛行機の製作を過去にやってみたことがあるが、今では、仮に、作っても、それを実際に飛ばし 写真 3討議風景 てみるのはむずかしいだろう」「ベビーエレファントは時間数の関係から作らせるのはもう無理。これからは教具の1つとして使うのがよい。後世に残すだけの価値のある教材だ」などの意見が討議で出された。「学習指導要領にも、『エネルギー変換に関する技術の適切な評価・活用について考えること』を指導するようにと記されている。藤木氏の問題提起されたことはこれに合致し、エネルギー変換の技術史の形で、学習の導入あるいはまとめで取りあげるとよい」ということを確認した。 

 
Aエネルギー変換としての電気の取り扱いについて考える野本勇 (麻布学園 ) 人間は古代から何らかのエネルギーを利用しやすい形に変えて使ってきている。どんなエネルギーも簡単に電気エネルギーに変換できるなど、電気エネルギーは便利な点が多いので、電気エネルギーを重点的に取りあげている。電気の発達の歴史を概観したうえで、電気回路などの電気の基礎知識の学習に移っている。直流と交流のちがいも取りあげ、製作学習へと進めている。 討議では交流の学習に議論が集中した。野本氏が、「水流とポンプの動きから説明している」と、交流の説明のしかたを披露した後、意見が噴出した。「技術・家庭科でも理科でも、交流をちきんと説明した記述はない。だから、直流や交流の波形を表わす図が載っていても、それが何を意味するかがよくわからない生徒が多いのは当然かもしれない」「エネルギーとしての電気を取り扱うのならば、発電の原理も扱うべきだろう」「教科書には誘導モータの特徴が事細かに記述されているが、モータの回転原理も十分に理解していない生徒がこのような記述を理解できるとは思われない。教科書の記述が生徒の実態にあっていない」などなど。

  野本 勇(麻布学園・技術科) isa05nomoto@snow.plala.or.jp
金子 政彦 (大船中学校) mmkaneko@yk.rim.or.jp