日時2012年11月24日(土)14:00〜17:00
会場 麻布学園(家庭科室)
麻布学園(家庭科室)
内容 サツマイモを育てて食べる
参加者が会場の調理室へ着いたときには、生徒たちが調理実習中であった。実習をしていたのは中学校の1年生で、指導は齋藤美重子氏である。会場校の野本勇氏にことわって、実習の様子を見学させていただいた。
今年度(平成24年度)、大豆の栽培に失敗し、途中からサツマイモの栽培に切り替え、11月はじめに収穫時期を迎えた。
栽培学習に取り組んだのは1年生で、自ら収穫したサツマイモを使っての調理実習に取り組んだ。ただ、調理実習は授業時間内組み込むことが出来なかったので、放課後の実施とした。そこで、実習参加の希望を募っての実施になり、定例研当日の実習と重なった。
大豆からサツマイモの栽培に切り替えた経緯などの詳細は、2012年7月定例研報告(産教連通信第185号掲載)あるいは第61次全国大会報告(産教連通信第187号掲載)を参照されたい。
サツマイモやジャガイモなどのイモ類は、地下茎あるいは根の一部が肥大して塊茎または塊根となり、その部分に多量のデンプンその他の多糖類が蓄えられたものである。食用に供されるだけでなく、デンプンや菓子などの加工原料として広く利用されている。
サツマイモは甘藷や唐芋などの異名を持ち、繊維が多く、ビタミンB1やビタミンB2、ビタミンC を多く含む。また、加熱によりデンプンを糖に変える酵素がはたらき、甘みが増す。さらに、サツマイモは、収穫後すぐに使うのではなく、しばらく貯蔵した後に使うと、甘みが増しておいしく食することができる。このようなことから、石焼き芋・天ぷら・スィートポテト・大学芋・きんとん・スナック菓子・干し芋などに加工されて利用されている。
サツマイモやジャガイモは江戸時代の飢饉や戦中・戦後の食糧難の時代には主食として奨励され、多くの人々を飢餓状態から救った。ジャガイモの生産量は1910年頃にはサツマイモに及ばなかったが、1920年前後には生産量がサツマイモを上回るまでに増大し、2010年にはジャガイモはサツマイモの約 2.8倍にまで収穫量が伸びている。配付された資料にはこのような内容が記されていた。
この日の実習では、生徒たちはサツマイモご飯にサツマイモのみそ汁とスィートポテトという、サツマイモを使った3種類の調理に挑戦していた。調理終了後、生徒は自分たちの作ったものを試食したが、野本氏と齋藤氏のはからいで参加者もお相伴にあずかった。テーブルを囲みながら、しばし、サツマイモ談義に花が咲いた。試食用のテーブルには、学校で栽培・収穫したサツマイモと野本氏の自宅の畑で栽培したサツマイモの両方がふかし芋として並べられた 写真2 生徒が収穫した芋。同じ品種の芋なのに、どうしてこうもちがうのかというくらい、外見も味も異なっていた。その点については、その後の討議のなかでも話題の1つとなった。
野本氏にサツマイモの栽培について改めて解説をお願いした。「サツマイモは、1年生が校舎の屋上に置いたプランターで大事に育て、収穫までこぎつけた。今回の栽培では、単に作って収穫して終わりとするのではなく、収穫した芋を使った調理までやってみようと計画した。授業時間内に調理実習の時間を確保するのはむずかしいが、何とかして調理実習をやらせてみたいとの強い思いから、今回のような形での実習となった。生徒たちが植えつけた苗の 写真3 左の皿:学校のプランター栽培の芋,右の皿:野本氏の畑 芋の残りを自宅に持ち帰り、栽培してみた。今回、東日本で多く栽培されているベニアズマという品種を使ったのだが、同じ品種でありながら、外見や味がどうしてこんなにちがうのかという結果が得られた。栽培に使った土と育て方(肥料や水のやり方)のちがいが大きく影響しているようである」との補足説明があった。「学校で育てたものはプランター栽培、野本先生の育てたものは畑での栽培ということになる。学校で収穫したものは皮が薄く、やや水っぽくて甘みがある。そのちがいが食べ比べてみてよくわかった」との参加者の発言に代表されるように、そのちがいが歴然としていることに、みな一様に驚いていた。
野本 勇(麻布学園・技術科) isa05nomoto@snow.plala.or.jp
金子 政彦 (大船中学校)
mmkaneko@yk.rim.or.jp