日時2012年10月6日(土)14:00〜17:00
会場 麻布学園(電機室)
麻布学園(技術・電機室)

内容 金属材料の特徴をよく知ったうえで指導を

 10月は体育祭や文化祭の開催あるいはその準備などで忙しい時期である。それにもかかわらず、多くの参加者があり、その半数近くが経験の浅い教員で占められていた。さて、今回は、加工学習で取りあげられる事が少なくなった金属加工について、実験・実習を交えながら検討してみた。
  この金属加工については、4年ほど前の定例研(2008年4月)でも取りあげている。そのときの実践報告は『技術教室』2008年6月号(現在は休刊)を参照願いたい。

 身のまわりでたくさん使われているのもかかわらず、意外に知られていない金属の特徴を、実験を交えながら始める。金属は、折り曲げなどにより加工硬化を起こす、熱処理により性質が変わるなどの特徴があることを、あらかじめ用意した何種類かの針金(材質は硬鋼・軟鋼・黄銅・アルミニウムなど)を使って、確かめさせる。焼き入れ・焼きもどし・焼きなましのそれぞれの熱処理による性質のちがいは、この3種類の熱処理を施した弓のこ刃を渡して曲げさせてみることで理解させる。  こうした金属材料の特徴をひととおり学習した後で、黄銅板を使って、ミニはんだごてクリーナーの製作に取り組ませる。また、黄銅棒を使って、キーホルダーづくりにも取り組ませる。製作実習を取り入れながら、金属材料の各種の特徴をぜひとも学ばせたい。

 研究会当日は、黄銅棒を使ったキーホルダーづくりと炭素鋼を使った小刀づくりの両方を参加者は体験した。経験豊富な藤木勝氏(東京学芸大)にも製作指導にあたってもらい、工具の正しい使い方や作業中に見落とされがちな点について、参加者にきめ細かく指導していた。
 ひととおりの製作実習を終えた後、会議に移った。「キーホルダーづくりでは、黄銅棒の一端におねじを切った後、ペンチや万力を使って D環状に曲げていく。思いどおりの形に調整するため、曲げたりもどしたりを繰り返していると、材料が加工硬化を起こしているので、ポキンと折れてしまうことがよくある。それを見越して、予備の材料を多めに用意している。曲げる作業の失敗が度重なる生徒に対しては、材料を焼きなまして曲げやすくなるようにもしている」との補足が野本氏よりなされた。」  「金属加工で取りあげる内容は幅広い。板金材料や棒材を使っての製作実習、鋳造を利用した作品製作などがある。旋盤やボール盤などを使う機械加工を取りあげることも考えられる。これらのすべてを取り扱うのは時間的に無理なので、何をポイントにするかを指導する教師側でしっかり押さえたうえで取り組ませたい」「技術・家庭科の授業が週に3時間あった頃に使われていた教科書に比べれば、現在の教科書に載っている金属加工に関する内容はぐんと減っている。授業で金属加工を扱う場合には、そのことを念頭におき、必要な資料を教師側で用意して授業に臨む必要がある」

 「現在の学習指導要領下ではすべての内容を指導しなければならず、加工学習で木材と金属の両方を取りあげて製作するのは厳しい。多くの場合、木材加工を取りあげるだろうから、そのなかで金属にかかわる学習も含めてしまうことを考えてみたらどうか。たとえば、木材加工では各種の道具や機械を使う。それらの多くは金属製だろうから、それと関連づけて学習をするようにしてしまうのである。要は、教師側で子どもに何を学ばせたいのかという考えをしっかり持ち、それをもとに授業を組み立てていけばよいのではないか」などという意見が出された。

野本 勇(麻布学園・技術科) isa05nomoto@snow.plala.or.jp
金子 政彦 (大船中学校) mmkaneko@yk.rim.or.jp