日時 2012年4月14日(土)14:00〜16:00
会場 麻布学園(技術・加工室)
   港区元麻布2-3-29 

内容 「年度はじめに検討する学習効果のあがる教材」

 新年度が始まって1週間あまりが過ぎた土曜日の午後に研究会が行われたのだが、この日は冷たい雨の降るあいにくの天気となった。当日は、悪天候にもかかわらず、この4月から教壇に立った教員を含めて、10人を超える参加者があった。首都圏の桜は、無情の雨に散り始めているところが多いとの情報も参加者から報告された。

 参加者のなかに新任教員や経験の浅い教員が複数いたので、研究会終了後、会場を別の場所へ移して歓迎会を行い、経験豊富な参加者が自らの体験談を紹介し、若い参加者を激励した。
 4月は、年間指導計画の立案をはじめとして、教材の準備、技術室や家庭科室の整備などで時間がいくらあっても足りないくらいである。たとえ忙しい毎日でも、教材の検討に手を抜くことはできない。そこで、今回は、学習効果があがり、しかも、子どもが理解しやすい教材とはどんなものかを検討してみた。

@簡単ではあるが実は奥の深い教材のテーブルタップ野本勇(麻布学園)
 電気学習は2つの学年で取り上げている。その場合、子どもの発達段階を考慮しながら授業を進めている。テーブルタップが電気学習の教材としてよく取り上げられるが、扱い方によっては学習に幅を持たせることが可能で、電気学習の基礎となるといえる教材だろう。
 初任の先生が複数参加されていたことも考慮し、テーブルタップを実際に製作してみて、そこから指導上のポイントや子どものつまずきやすい箇所を探ってみることにした。材料や工具類の準備、製作指導は会場校の野本氏が行った。授業ではコードとプラグやタップとの接続に圧着端子を使う場合が多いが、一般家庭ではこの方法はまずできないので、コードの芯線をねじに巻きつけるやり方で製作してみた。ワイヤストリッパという、コードの被覆はがしに便利な専用工具があるが、これは使わずに、ラジオペンチとニッパを使った。こうした工具すらない一般家庭も多いので、どこの家庭にもあるカッターナイフやはさみを使った、コードの被覆はがしの方法も紹介した。初任の先生には、野本氏をはじめとして、経験豊富な参加者が手取り足取りの形で指導のコツを伝授していた。

     
  写真 野本氏の指導を受けながらテーブルタップ作りに取り組む参加者

 配線器具には定格電流(許容電流)が定められているが、その理由を実感させることをねらった、芯線の本数が通常の半分以下のコードを使ったテーブルタップも製作してもらい、実際に電熱器をつないで体験してもらった。また、参加されていた亀山俊平氏(和光学園)が、テーブルタップの製作時に使っている大型教具や長距離送電による電力ロスを体感させる教具などを参加者に紹介された。
写真 亀山氏とともに体感実験する参加者

 A皆さんはどうしていますか?計測・制御の授業の導入 金子政彦(鎌倉市立大船中学校 )
学習指導要領やその解説にはプログラムによる計測・制御についての指導すべき事項が記されているが、いきなりこれらの内容を指導してみても、子どもが理解するのはむずかしいと思われる。「制御とは何か」とか「なぜ自動制御が必要なのか」といったようなことをわかりやすく教えられる適切な教材はないものか。
 その後の討議では、自分の実践をもとにした意見がいろいろ出された。「電気炊飯器も、今は、米の種類や炊きあがり具合などをあらかじめ設定しておけば、マイコン制御のおかげで、炊飯ボタン一つの操作でご飯が炊ける。昔は、磁石を利用した機械制御だった。ブラックボックスの多い電子制御を扱う前に、機械制御の例を取り上げるべきだろう。これなら、原理的なことを見せて、子どもにも理解させやすいはず」「水洗トイレは、水を流した後、タンクに水をためなければならないが、適量の水がたまった時点で、タンク内に設置してあるフロートのはたらきで水がひとりでに止まるしかけになっている。タンク内の水量の調節を手動でやるのは大変ということが実感できる教具を作る準備を進めている」「制御の意味やその必要性を子どもに理解させるには、“手動制御から自動制御へ、コンピュータによる自動制御の前に機械制御を”という学習の流れになるだろう。それにしても、計測・制御の教材が高価すぎるのが難点」などなど。「制御についての知識をある程度子どもに身につけさせたうえで、機械制御では実現がむずかしいようなことがコンピュータを使うことによって簡単にできるようになることが理解させられれば、それでこの単元の目標はほぼ達成できたと考えてよいのではないか」ということを今回のまとめとした。このように考えてくると、教科書はあまり役に立たないという意見が大勢を占めた。フリーソフトで使えるものがいくつかあるという話も参加者から出されたことを付記しておく。

野本 勇 (麻布学園・技術科) isa05nomoto@snow.plala.or.jp
金子政彦(大船中学校) mmkaneko@yk.rim.or.jp