2月定例研の報告
日時 2012年 2月18日(土)2:30〜4:30
会場 麻布学園 (家庭科・技術室)
内  容
情報基礎につながる電気学習としてのラジオ教材について考える


2月の定例研究会はここ数年参加者が少なかったが、この日は十数名の参加者があり、しかも、その半数近くが若い方であった。今回は、最もシンプルなラジオといわれるゲルマニウムラジオを作り、それをもとに、ラジオを教材としてどう扱うかを検討してみた。ラジオ作りにかかわる材料の準備と製作指導は会場校の野本勇氏にお願いした。製作前に、野本氏から、3年で実践しているラジオ製作についての報告があった。
 本来、ラジオは電線を用いない通信方式を意味し、放送を送る側と受信する側の両者を指すものであるが、今ではラジオ受信機を単にラジオと称している。現在の情報化社会の原点はこのラジオにあると言っても過言ではない。音声を電気信号に変換した(低周波)だけでは遠方まで届かないので、高周波に低周波をのせ(変調とよぶ)て、ペアで曇りガラス電波として送ると、遠くまで到達できる。逆に、空中を飛び交う電波(電磁波)の中から目的の電波を選び、その中に含まれている低周波信号を取り出し、音声に変える装置がラジオ受信機で、そのためには、コイル・コンデンサ・ゲルマニウムダイオード・イヤホーンなど板書されたゲルマラジオの回路図が最低限必要である。それがゲルマラジオということになる。(板書の図参照)
 野本氏による以上のような説明の後、参加者にゲルマラジオ作りに挑戦してもらった。用意された材料は、厚紙・銅箔テープ・ポリバリコン・ゲルマニウムダイオード・クリスタルイヤホン・フィルムケース・エナメル線がそのおもなものである。紙幅の関係で、作り方の詳細は省略する。
 ゲルマラジオ作りをする参加者(ハンダづけ)どの参加者も50分ほどでひととおりの作業を終わらせることができたが、エナメル線をフィルムケースに巻いてコイルを作る作業まで至らなかった参加者も見られた (図2)。今回はコイルを作るのにフィルムケースを用いたが、コイルの直径が大きいほど分離がよくなって混信が少なくなるから、ペットボトルにエナメル線を巻いたりスパイダコイルにしたりするとよい、との補足説明が野本氏よりなされた。残念ながら、アンテナ線の関係で、会場内で実際に放送を受信するところまではいかなかった。

 ラジオは放送の送受信全体を指すものだということを実証してみようということで、教室内にミニチュア版の放送局を開局したのが藤木勝氏(東京学芸大学)で、持参された実験装置を使って実演していただいた(図3)。玉音放送のテープの音声がこの装置から流れ出ると、参加者から歓声があがった。藤木氏の実践の詳細は『技術教室』2005年8月号をご覧いただきたい。
 最後に、討議のなかで出された意見のおゲルマラジオ作りをする参加者たちもだったものを紹介しておく。「通信の歴史を振り返ってみるに、昔ののろしや手旗信号といった伝達手段から、通信線の不要な情報伝達手段としての電波の利用を考えたわけだから、そうした歴史的なことも踏まえたうえで教えたい」「授業で電波(電磁波)を取り上げるためには、交流について触れておかねばならない。幸い、教科書にも交流や直流の波形が載せてあるのだから、これをうまく活用したい」「学習指導要領にも『技術が生活の向上や産業の継承と発展に果たしている役割について取り上げること』という趣旨のことが明記されているのだから、これを念頭に授業を組み立てたい」